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 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、患者や感染者との接触機会を減らす観点から可能な限り、テレワークの積極的な活用をお願いする――。総務省が2020年2月25日付で同省サイトに掲示した文書から抜粋したものだ。この時期を前後して企業は相次いでオフィスへの出社を控え、テレワークにシフトした。「テレワークの実施率が以前の2倍以上になった」との調査結果もある。

 テレワークを実施した企業の経営者や社員はそのメリットを享受した。経営と業務の両面で効果があるのなら、感染拡大が収束しても後戻りすることはない。パーソル総合研究所が「新型コロナ収束後のテレワーク継続意向」について全国2万5769人の就業者を対象に尋ねたところ、「続けたい」との回答が全体の半数を超えた。

 しかし、多くの企業のオフィスは一定数の社員がテレワークをする前提で構築していない。筆者は「今後、企業はオフィスの再構築に取り組む」と考え、不動産仲介会社や建築設計事務所、ITベンダーというオフィス環境に関わる関係者に取材した。すると「ウィズコロナ」や「アフターコロナ」におけるオフィス環境の「ニューノーマル(新常態)」がほの見えてきた。

広さ:「すし詰め」のオフィスは減る?

 テレワーク実施企業からは「テレワークが広がれば今ほどのオフィス面積は必要ない」という声も聞かれる。不動産仲介会社はどうみているのか。

 オフィス仲介大手の1社、三幸エステートのチーフアナリストとオフィスビル総合研究所の代表を兼任する今関豊和氏は次のように予測する。「2020年第1四半期に0.6%だった東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)オフィスの空室率は、2023年第1四半期に5.1%となる」。

 オフィスの空室率は0%に近くなるほど売り手市場になる。それが5.1%まで高まるということはより買い手市場に転じることを意味する。ただ同氏は「空室率が8%以上となったリーマン・ショックを超えるものではない」とする。オフィスの増床を取りやめる企業はあっても、現状レベルのオフィス面積を維持する企業は少なくないとの見方だ。

東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)におけるオフィスの空室率予測
東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)におけるオフィスの空室率予測
(出所:オフィスビル総合研究所)
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 企業がテレワークを本格的に導入するなら、不要となるフロアの賃貸契約を解除して固定費を改善してもよいはずだ。しかし、ウイルス感染症の今後の再流行に備えるためには一般に「6~10平方メートル程度」とされる1人当たりのオフィス面積を増やして、座席の間隔を空けなければならない。非常時の事業継続を重視する企業ほど、会議室やミーティングスペース、食堂・休憩スペースなどで、人と人の「間隔」を広げるわけだ。そのため不要なフロアはさほど生じないのかもしれない。

 また、都心にあるオフィス面積を減らす場合でも「事業継続の観点から郊外にサテライトオフィスを設けて拠点を分散させる企業も増える」(今関チーフアナリスト)という。このため、郊外でのオフィス需要は拡大する可能性がある。少なくとも今後「すし詰め」のオフィスは減りそうだ。