日経 xTECHには、公開日が1年前なのに、たびたびアクセスランキング上位に浮上する記事がある。ライター/システムエンジニアの伊藤朝輝氏が執筆した「iPhoneのパスコードを忘れた! 慌てずに済む3つの方法」である。
記事では、iPhoneのロックを解除する「パスコード」を忘れてしまった場合の対処策を紹介している。特に土日に上位にランキングされていることが多い。パスコードを忘れて困り果てた身内に泣きつかれ、休日に“家庭内サポート”をしているITエンジニアが読者なのかもしれない。
iPhoneのパスコードに限らず、ITに関連する仕事をしていると「パスワードを忘れてしまった」という相談を受ける機会があるだろう。実は筆者もある。正直なところ、かなり面倒くさい。パスワードの再設定方法を教えたところ、「そもそもどんなメアドで登録したのか覚えていない」と返ってきたときには、どうしていいのか途方に暮れた。
今後は「パスワード管理ツールを使ってほしい」で済ませようかと考えた。ただ、ITが苦手な身内にパスワード管理ツールを紹介して、安全に扱えるのだろうか。
パスワード管理ツールはハードルが高い
ITに慣れたユーザーだとパスワード管理ツールはとても便利だが、そうでないユーザーにはハードルがあるとの指摘もある。
パスワード管理ツールを使うには(1)ツールが信頼できるかどうかの導入時の判断、(2)ツールが壊れた場合に備えた適切な運用、の2つのハードルがある。どちらも、ITリテラシーが高いユーザーでないと難しい。
スマートフォンアプリのパスワード管理ツールの場合、パスワードがローカルだけに保存されるタイプと、クラウドに保存されるタイプがある。アプリを見ただけでは分からないので、調べる必要がある。その上、提供元が信用できる企業なのかどうかも考えないといけない。こうした判断をITが苦手な人に押しつけるのは難しそうだ。
ITに詳しいユーザーがツールを選んであげても、運用の問題が残る。マスターパスワードを忘れてしまった、ハードウエアが故障した、ソフトウエアやクラウドに障害があったといった理由で、パスワード管理ツールで保管するパスワードを見られなくなってしまう可能性がある。回避するには、適切な設定やバックアップなどが必要になるが、ITが苦手な人にとっては負担が大きい。