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 「ファイナンス(資金調達)を気にしたり、顧客に初めて自社のサービスを使ってもらったりとドキドキを感じつつ、IT部門にいたらできなかった経験を積んでいる。後から振り返って、きっと楽しかったと思えるはず」。zooba(ズーバ)の名和彩音代表は、きっぱりと話す。

zoobaの名和彩音代表
zoobaの名和彩音代表
(撮影:日経クロステック)
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 名和氏がSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)管理サービスの提供を目的としたzoobaを設立したのは、2021年8月。22年5月時点では限られた顧客向けにベータ版を提供しており、22年中の正式リリースを目指す。

 前職ではディー・エヌ・エー(DeNA)のIT部門でグループマネージャーなどを務めていた。自らの経験やキャリアを生かして会社を興す例はIT業界でもそれなりにあるが、名和氏のように企業のIT部門から直接起業の道を選ぶケースはまだ少ない。

「自社だけでなく、他の企業も助けられる」

 起業に至ったのは、自らの問題意識と起業への後押しが重なった結果だ。名和氏はサーバーやネットワーク周りを得意とするインフラエンジニアだった。派遣エンジニアを経て日本マイクロソフトで5年間働き、「吸収できるものは吸収した」(名和氏)のちに、DeNAに転職。当初はインフラ管理部門に所属していたが、「もっとユーザーに近いところで事業に貢献していきたい」という思いでIT部門を志願し、2018年に異動した。

 IT部門では事業を理解してソリューションを提案する社内コンサルティングに近い仕事や、全社的なセキュリティー管理を担う「CSIRT」の活動に携わるなど、仕事のスコープが一気に広がった。「サーバーとネットワークだけを相手にしていたところから、システムを使う人の顔が見えるようになった」(名和氏)。

 一方で業務の課題も感じていた。複数のSaaSのアカウントやライセンスの管理、運用といったSaaS管理はその1つ。「サーバーやネットワークの世界は、ログを確認すれば問題を発見できるなど比較的分かりやすい。これに対し、クラウド上に全ての情報があるSaaSは運用やコスト管理の観点で、とても見えにくい。サービスごとにアカウントに関する考え方が異なり、それぞれの特性に合わせた対応も必要。サービスの種類や利用者が増えると、管理はさらに複雑になると危惧していた」(名和氏)。

 同様にSaaS管理を課題として捉える人たちが近くにいた。DeNAからスピンアウトした起業支援組織のデライト・ベンチャーズだ。起業の「種」を持つDeNA社員や社外の人間と、アイデア段階から二人三脚で事業開発を進める「スタートアップスタジオ」の役割を担う。

 SaaS管理は起業の種になり得る、と考えていたデライト・ベンチャーズは関係者へのヒアリングを実施。その相手を務めたのが名和氏だった。担当者と議論するなかで、「自社だけでなく他の企業の課題解決にも関われると知り、ぜひ自分でやってみたいと思った」(名和氏)。そこでデライト・ベンチャーズの支援を受けつつ、起業への道を歩む決意を固めた。