楽天モバイルが2022年7月に料金プランを刷新し、データ使用量が月1ギガバイト以内ならば0円というこれまでのプラン設計を廃止することが物議を醸している。ネット上で多く見られるのは解約を検討したり、実際に解約したりしたユーザーの声だ。
記者も楽天モバイルを契約しておりそうした心情は理解できる一方、経営目線では格安訴求から1年強で抜け出したことをポジティブにも捉えている。なぜなら、通信事業者が安さを売りにしていったんは好調になるものの長続きせず、逆に苦境に陥り、そこから抜け出せない「アリ地獄」のようなケースをこれまで複数目にしてきたからだ。
ウィルコム、音声定額で契約増も追随され失速
例えば2000年代後半のPHS事業者ウィルコムだ。低迷を続けていた旧DDIポケットが米Carlyle Group(カーライル・グループ)と京セラによる買収で独立系となり、2005年2月にウィルコムへ社名変更し再始動。そんな同社が同年5月に始めた起死回生の策が「ウィルコム定額プラン」だった。ウィルコム回線同士ならば月2900円の定額料で話し放題となるという、当時としては画期的な音声定額だった。
同社の契約数は、旧DDIポケット末期には月数千件程度の小幅な増減を繰り返す程度でほとんど変動がなく、社名変更した2005年2月末時点では299万8200件だった。これがウィルコム定額プランの効果で急増に転じ、翌2006年5月には400万件を突破。同年12月末には435万9500件まで伸ばした。
関連記事 PHSの音声通話が「掛け放題」---ウィルコムが定額制サービスを5月開始しかし音声定額で割安さをアピールする戦略は長続きしなかった。直後の2007年1月にソフトバンクが、夜間帯の4時間を除くという条件付きながらも月980円で自社回線同士を話し放題とした「ホワイトプラン」を開始すると情勢は一変した。
ウィルコムの契約数は同年7月末に465万9100件のピークを付けて以降、再び小幅な増減を繰り返す状況に逆戻り。同社は同年12月、次世代PHS向けに2.5ギガヘルツ帯の周波数を獲得したが、PHSからの潤沢なキャッシュを元手に次世代PHSを軌道に乗せるという事業戦略に黄信号がともった。次世代PHSの研究開発や設備投資の負担に加え、2008年のリーマン・ショックの影響もあって借入金の借り換えが難航するなどして資金繰りに窮し、2010年2月に会社更生法の適用申請を余儀なくされた。
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