日経アーキテクチュアが2023年3月に発行した書籍『設計実務に使える 木造住宅の許容応力度計算』(著者:大橋好光、柳澤泰男)が予想外の反響を呼んでいる。1カ月足らずで増刷となった。許容応力度計算(建築物の構造計算方法の1つ)という専門的なテーマ設定の書籍としては、異例の人気ぶりである。
許容応力度計算の本を発行した狙いは、2025年に施行される予定の改正建築基準法の4号特例縮小に対応する「住宅設計者向けの入門書」を用意したかったからだ。現在、壁量設計などで構造耐力を確保している住宅設計者に向けて、今後は許容応力度計算の導入を促したいと考えた。
25年の施行までにはまだ時間がある。しかし書籍への反響の大きさから、改正法施行に向けて既に準備が始まっているように感じる。4号特例は、建築確認の際に地上2階建てなどの小規模木造住宅については、構造の審査を省略する制度だ。ところが改正で、2階建て木造住宅も審査の対象になる。
現行法規では2階建ての一般的な木造住宅の場合、一律の基準値を用いる壁量設計と、建物ごとに構造計算する方法がある。25年の改正法施行を機に、壁量設計から構造計算への移行を検討している住宅設計者の話をしばしば耳にする。
許容応力度計算への移行に影響を及ぼしているのは、22年10月に国土交通省が示した「ZEH壁量等基準」の案だ。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は省エネルギーの基準だが、構造面にも影響がある。太陽光発電パネルや高断熱窓サッシなどの採用によって、住宅の総重量が大きくなることに対応するためだ。
国交省のZEH壁量等基準案では、いくつかの構造設計方法を示している。従来通り、一律の基準値を用いる方法や構造計算を用いる方法だ。記者は構造計算が主流になると予想している。国交省は「構造計算をすれば、基準の見直しの影響を受けない」と説明しているからだ。