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 新型コロナウイルスの影響によって、社会が大きく変わろうとしている。この1カ月間で筆者は、収束後に訪れる「アフターコロナ」で何が変わるか、というテーマで多くの関係者に取材した。得られたのは「様々な技術の社会実装が早まる」という考えだ。

 別にアフターコロナ時代は、まったく新しい社会になるというわけではない。本来ならもう少し先に社会実装されたであろう技術を活用できる、「未来を先取りしたデジタル社会」である。社会実装が早まる技術としては、例えばオンライン診療や遠隔授業などでの、遠隔で何かを実施するためのプラットフォームと基盤技術が挙げられる。

 この他、無人で荷物を運ぶドローンや自律走行ロボット、遠隔コミュニケーションを担う「アバターロボット」などの実用化も加速するだろう。従来はコストに見合わなかった新技術の導入が、コロナ禍を契機とした需要の変化で、一気に進み出すとみられる。

街全体の3Dデータ化でARクラウドに芽

 特に筆者が注目するのは、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)の発展だ。なかでも、VR/AR分野で注目されている新技術に、「ARクラウド」がある。実用化までまだ数年かかるとされていたが、アフターコロナで急発展する可能性がある。

 ARクラウドとは、現実の空間情報をデジタル化してクラウドに保存し、複数台の端末(スマートフォンなど)で同一のAR空間を共有するための技術基盤を指す。「ポケモンGO」などで有名な米ナイアンティック(Niantic)などが開発を進めている。

 ARクラウドを使えば、街中の観光スポットやビルなどあらゆるところに情報を付与でき、自分好みの情報で満たされた空間で暮らせるようになる。通常のARアプリは体験が個人にとどまっているが、ARクラウドは複数人で同じAR空間を共有できるのが大きな違いだ。例えば、友人が訪れた場所に残したコメントを、同じ場所に表示して見られるようになる。街全体を舞台にしたARゲームで遊ぶなら、表示する仮想物体(オブジェクト)の位置を共有することでマルチプレーを楽しめるようにもなる。

 ARクラウドを実現させるには、現実の空間情報を取得し、3次元(3D)データ化することが重要とされている。例えば、周囲の情報をセンサーやカメラなどで認識して、ユーザーの端末位置を把握する際に、計測した3Dデータを用いる。加えて、デジタル広告などの視覚的な情報をARで現実空間に重ねて表示する場合、建築物などの形状に合わせて表示できれば違和感が少なくなる。

現実空間の街に情報をAR表示するイメージ
現実空間の街に情報をAR表示するイメージ
KDDIなどが進める「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」にて、渋谷のスクランブル交差点に、飲食店の情報や仮想物体(オブジェクト)をAR表示させた例。(出所:KDDI)
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 このARクラウドを実現するためのカギとなる「現実空間の3D化」が、建設分野のデジタルシフトによって大きく加速するとみられる。

 建設分野では、設計や施工などの現場でデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるにあたり、都市や建築物の3Dデータ化とその活用を推進し始めた。これまでも設計段階でCADやBIM(Building Information Modeling)データは使用されてきたが、国や自治体が主体となって、さらに推進させる動きが起きようとしている。

 その背景には、テレワークの推進で、設計などで3Dデータを用いる必要性が増加したことが挙げられる。さらに、都市内の人の移動や施設内の動線などをシミュレーションしたり、3Dモデルを共有して遠隔地からでもレビューしやすくなったりと、3Dデータの活用が評価されつつあることも理由の1つだ。

 ここでARクラウドにとって重要となるのは、各都市や建築物の3Dデータを集約した街全体の3Dデータ基盤が、国や自治体などの公的組織の元で作られる可能性があるということだ。建設会社がそれぞれ3Dデータを持っていても、複数の建設会社が手掛けている街全体で集約する枠組み作りは困難だっただろう。それらの3Dデータをまとめて利用できる環境が生まれるかもしれない。

 もし街全体の3Dデータが共通プラットフォーム上に保管されていれば、複数のサービスやアプリが登場しても、位置座標などのデータの照合と参照が簡単になる。使い勝手がよくなれば、ユーザーも増えて普及しやすくなるだろう。