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 在宅勤務時の困り事を解消するための”お役立ち”記事をまとめるため、メンタルケアの専門家に協力を仰いだ。テーマは、「在宅ストレス」。しかし、ストレスの対象に関しては、もっと視野を広げるべきだった。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止に関わる緊急事態宣言が2020年5月25日に完全解除された。するとツイッター(Twitter)などのSNS(交流サイト)で、通勤再開に伴うストレスを口にする人が現れ始めた。

 特に通勤電車の混雑はそれだけでも、感染リスクの有無とは別に依然深刻な課題だ。都心のワーカーが何十年も苦しめられているのを忘れかかっていた……。

 日本国内におけるテレワークの事始めは1984年とされる。本格的に可能性が言われるようになったのは、インターネットの普及以後のはずだ。  

 例えば日経アーキテクチュアは2000年に、情報革命に関する特集を組んだ。その中で、職住一致型住宅や郊外のオフィスを“上げ基調”の建築としてクローズアップした。「ワーカーはオフィスを離れ、オフィスは都心を離れる」とうたっている。

 ”予言”として、どれぐらい当たっていたのかを考えると心もとない。

日経アーキテクチュア 2000年6月12日号特集「情報革命で建築はどうなる」より(資料:日経アーキテクチュア)
日経アーキテクチュア 2000年6月12日号特集「情報革命で建築はどうなる」より(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュア 2000年6月12日号特集「情報革命で建築はどうなる」より(資料:日経アーキテクチュア)
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 04年には、オフィス改革に関する特集を組んだ。筆者は、分散型のワークプレイスの取材などを担当している。通勤電車の混雑緩和も、セットで考えられている動きだった。「今後、ワークプレイスが切り刻まれて、都市の中に配置され始める」と記している。

 近未来を探る特集だったため、予言に類する興味深いコメントも現れる。大手メーカーの情報・通信部門の担当者が、テレワーク浸透後の社会を語ったものだ。

 「少なくとも東京では様々な就労形態が生まれ、24時間誰かが働いている場所になるだろう。すると、地下鉄などの交通機関が24時間営業するなど、都市自体が変わらざるを得ないのではないか」

 近年、ナイトタイムエコノミー(夜間経済)推進などの議論の中で、深夜の公共交通機関の営業が話題として取り上げられてはいる。しかし、東京が真の「眠らない都市」に変わる気配はない。むしろコロナ禍の影響で、ファミレスが深夜営業の廃止を決めたところだ。

日経アーキテクチュア 2004年6月14日号特集「ひとが活きるオフィス」より(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュア 2004年6月14日号特集「ひとが活きるオフィス」より(資料:日経アーキテクチュア)
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日経アーキテクチュア 2004年6月14日号特集「ひとが活きるオフィス」より。領域の制約から解放された「ノンテリトリアル」な状態に向かう未来像も解説している(資料:日経アーキテクチュア)
日経アーキテクチュア 2004年6月14日号特集「ひとが活きるオフィス」より。領域の制約から解放された「ノンテリトリアル」な状態に向かう未来像も解説している(資料:日経アーキテクチュア)
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 11年には、東日本大震災を挟みながら編集作業を担当したオフィスに関する書籍「はたらく場所が人をつなぐ」(著=池田晃一/岡村製作所オフィス研究所(名称表記は当時))がある。既に当時、分散型のワークプレイスなどに関する重要な論点は(他のオフィス研究者も)提示は済んでいたものと考えている。

 「通勤を過去の遺物として扱い、疑問を呈することはとても重要だ」(「はたらく場所が人をつなぐ」より)

 「これまでのセンターオフィスをもっと身軽にし、むしろその外に『オフィスになり得る』空間の選択肢を増やすことが理想的だ」「2つの空間の間にテンポラリーな存在のオフィスが出現する。自分の働き方に合わせ、積極的にそれらのオフィスを使い分ける」(「はたらく場所が人をつなぐ」より)

書籍「はたらく場所が人をつなぐ」(著=池田晃一/岡村製作所オフィス研究所(名称表記は当時)、2011年)より。個人やチームが自らの働き方に合わせて様々な場所を編集し、「面」としてのワークプレイスを形づくる将来像を提示している(写真:日経アーキテクチュア)
書籍「はたらく場所が人をつなぐ」(著=池田晃一/岡村製作所オフィス研究所(名称表記は当時)、2011年)より。個人やチームが自らの働き方に合わせて様々な場所を編集し、「面」としてのワークプレイスを形づくる将来像を提示している(写真:日経アーキテクチュア)
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書籍「はたらく場所が人をつなぐ」(著=池田晃一/岡村製作所オフィス研究所(名称表記は当時)、2011年)より。チームがバラバラの時間・空間で働くようになっても、お互いの「つながり」を感じながら快適に働ける新しいオフィスの在り方を論じている(写真:日経アーキテクチュア)
書籍「はたらく場所が人をつなぐ」(著=池田晃一/岡村製作所オフィス研究所(名称表記は当時)、2011年)より。チームがバラバラの時間・空間で働くようになっても、お互いの「つながり」を感じながら快適に働ける新しいオフィスの在り方を論じている(写真:日経アーキテクチュア)
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