総務省と公正取引委員会がそれぞれ、携帯電話市場の競争状況に対する監視を強めている。MVNO(仮想移動体通信事業者)の料金水準を左右する接続料水準の在り方や、携帯電話大手による端末販売方法などに並んで、大きな関心を払っているのが中古スマホの流通実態だ。
NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの携帯電話大手3社がユーザーから下取りした中古スマホは基本的には国内の中古市場で流通していない。特に国内販売シェアで5割を超える米アップル(Apple)のiPhoneシリーズは、日本で下取りしたその多くが海外市場で流通しているという実態がある。
総務省は2018年4月20日にまとめた「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の報告書で、携帯電話事業者(MNO)や端末メーカーが中古スマホの国内流通を阻害していた事実が判明した場合、業務改善命令の対象にするという方針を打ち出した。
同様の方針は、公取も2016年に示した「携帯電話市場における競争政策上の課題」で打ち出している。携帯電話事業者が下取りした中古端末の国内流通を制限する、もしくは端末メーカーが携帯電話事業者に対し下取りした自社端末の国内流通を禁止するような行為は、拘束条件付き取引や取引妨害に当たり、独占禁止法上の問題となるとした。公取は2018年4月から再び携帯電話市場を題材にした有識者会合を開いており、今後、より踏み込んだ指針を示す可能性がある。
日本における中古携帯電話端末(フィーチャーフォンを含む)の流通台数はおよそ200万台の水準で、新品流通の10分の1にも満たない。日本の中古スマホ市場が、流通が活発な海外と大きく異なる「ガラパゴス」市場であることは確かだ。果たして、総務省や公取が中古スマホ市場への監視を強めることで、中古スマホの流通が海外のように活発になるのか。
米アップルは国内外で手のひら返し、海外では自ら「公認」中古
中古スマホの国内流通の状況はiPhoneが象徴している。ゲオやブックオフコーポレーションといった中古端末の流通事業者の集まりである「RMJ(リユースモバイルジャパン)」によると、会員企業9社が2017年度(2018年3月期)に買い取った中古のiPhoneシリーズ(5s以降の機種)は約21万8000台。新機種への買い換えで中古品の買い取りが増える10~12月を除くと、月間の買い取り台数は2万台に届かない水準で推移している。