全2316文字
PR

 MonotaRO(モノタロウ)は2022年4月から稼働を開始した物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター」(猪名川DC、兵庫県猪名川町)を2022年5月24日に公開した(図1)。800台もの無人搬送車(AGV)を導入し、作業者の歩行を徹底的に削減して生産性を向上させる。機械製品や電気製品の組み立て・加工工場ではなかなか見られない、物流倉庫ならではの方法でAGVを運用している。

図1 MonotaROの新物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター」
図1 MonotaROの新物流拠点「猪名川ディストリビューションセンター」
2022年4月に稼働開始した。(出所:MonotaRO)
[画像のクリックで拡大表示]

エレベーターで荷が階の間を移動

 猪名川DCは、第1期として1日9万行の出荷能力で運用を開始。2023年に第2期として全面稼働すると出荷能力は2倍の合計18万行、在庫能力は約60万点になり、その時点でAGV800台を稼働させる計画だ。AGVの台数や、出荷する商品数の点で「国内最大級」(同社)とみられる。

*  出荷量を捉える単位で、納品書やピッキング作業用リストの1行に相当する。MonotaROの場合は「受注1件当たり平均行数が3、1行に含む商品数(ピース数)の平均が3」(同社)という。

 サプライヤーから入荷した多種類の商品を在庫しておき、顧客から注文を受けたら直ちに出荷するのがDCの役割であり、要するにDCでの作業は入荷と出荷だ(図2)。同社は売上高が年率20%程度で成長を続けているため、出荷能力を同じペースで増やす必要があり、出荷拠点を計画的に増設している。

図2 猪名川DCのオペレーションの概要
図2 猪名川DCのオペレーションの概要
移動棚に商品を格納してAGVで運ぶ。エレベーターで垂直方向に搬送するのも特徴。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 入荷作業を少し細かく見ると、1階の着車場(バース)でトラックから商品を降ろして、作業者が検品して移動式の棚に積みつける(図3)。移動式の棚は、平たい形のAGV「Racrew」(日立製作所)が下に潜り込み、棚全体を持ち上げて動かせるようになっている(図4)。積みつけた後の棚は、AGVが棚専用のエレベーターに乗せて2階に送る。2階では迎えに出てきたAGVが所定の在庫置き場まで動かす。エレベーターで荷を上下方向に搬送するのが猪名川DCの特徴の1つだ。

図3 1階の着車場
図3 1階の着車場
黄色の通い箱は入荷用。(出所:MonotaRO)
[画像のクリックで拡大表示]
図4 入荷エリアの棚
図4 入荷エリアの棚
フェンスに区切った内部に移動式の棚が見える。(出所:MonotaRO)
[画像のクリックで拡大表示]

 出荷時には、受注した商品が載っている棚をAGVがピッキングステーションまで移動(図5)。ピッキングステーションでは作業者が商品を取り出して、受注案件ごとに品目と個数をそろえて青色の通い箱に入れる(図6)。このとき、作業者の頭上にあるプロジェクターによって該当商品に光を当て、誤りが生じないように指示を出す。

[画像のクリックで拡大表示]
図5 AGVによる移動棚の搬送
図5 AGVによる移動棚の搬送
AGV「Racrew」が棚の下に潜り込み、持ち上げて移動させる。棚は商品の大きさに応じて16種類用意している。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
図6 ピッキングステーション
図6 ピッキングステーション
到着した移動棚に対して、どの位置の商品を取るかはプロジェクターによる照射で示す。複数の商品を取る場合もある。ピッキングステーションは38カ所あり、現時点ではまだ全部は使っていないという。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 通い箱はフロア間搬送で3階に送り、作業者が商品を段ボール箱に入れ、商品の隙間にクッション材を入れる(図7)。段ボール箱は自動封かん機へと進み、自動封かん機は段ボール箱の上部を折り曲げて閉じる。内容物の量に応じて折り曲げ位置を調整できるようになっており、荷姿は商品が少なければ平たい箱、多ければ高さがある箱になる(図8)。

図7 梱包作業
図7 梱包作業
受注案件ごとにピッキングされてひとそろいになった商品が青い通い箱でやってくる。段ボール箱に詰め、隙間にクッション材を入れる。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]
図8 未梱包の段ボール箱
図8 未梱包の段ボール箱
上部の角にミシン目がある。商品を詰めた後、自動封かん機が内容量に応じてミシン目を適切なところまで切開し、折り曲げて箱を閉じる。(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]