無線LANは主に屋内で使うものだが、屋外利用も広がっている。スマートフォンのトラフィックは今も増え続けており、携帯電話回線への圧迫を防ぐために、トラフィックのオフロード先として無線LANの重要性が増しているからだ。
特に2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックには大勢の外国人観光客が訪れる。スタジアムや駅など人が密集する場所でも無線LANが快適に使えなければならない。そうしたなか、無線LANで使えるチャネルの不足や使い勝手の悪さが懸念されている。
その対策として電波法の省令が改正される。総務省は2018年5月9日に電波監理審議会に諮問し、原案を適当とする旨の答申を受けた。6月末までには改正された省令が施行される見込みだ。では、どのようにして屋外での無線LANを快適にするのだろうか。
屋外で使えるが通信が途切れる5GHz帯
無線LANで使える周波数帯は、大きく2.4GHz帯と5GHz帯の二つがある。2.4GHz帯は屋内外問わずに利用できるが、Bluetoothなどと周波数を共用しているため、混雑して快適に使えない。
5GHz帯は細かく分けると、5.2GHz帯(5150M〜5250MHz)、5.3GHz帯(5250M〜5350MHz)、5.6GHz帯(5470M〜5725MHz)の3種類の帯域があり、他の通信システムへの干渉を避けるためにそれぞれ利用に制約が設けられている。
5.2GHz帯と5.3GHz帯は屋内のみで利用できる。それぞれ5.2GHz帯は移動衛星、5.3GHz帯は気象レーダーと地球探査衛星への干渉を防ぐためだ。屋外で利用できるのは5.6GHz帯だけである。
一方で、5.3GHz帯と5.6GHz帯は、レーダーなどへの干渉を避けるための「DFS(動的周波数選択)」という機能をアクセスポイントに実装することが義務づけられている。アクセスポイントはレーダーの電波を検出するとチャネルの利用を停止し、別のチャネルに切り替える。その際、すぐに電波を出さずに、そのチャネルを1分間スキャンしてレーダーの電波がないか確認する。つまり、アクセスポイントは1分間通信できなくなってしまう。この機能のせいで、5.6GHz帯は屋外で使えるものの、使い勝手が悪いものとなっていた。
そこで5.2GHz帯を屋外で使えるように電波法の省令を改正することになった。単に屋外で使える5GHz帯のチャネルの数が増えるだけでなく、DFSで通信が途切れない使い勝手が良いチャネルが追加されることになる。