九州大学芸術工学部環境設計学科と同大学院で、27年にわたって教壇に立ち続けた土居義岳教授の最終講義が2019年5月28日、同大学大橋キャンパスで開かれた。土居氏は、18年に日本建築学会著作賞を受賞するなど、西洋建築史を専門とする歴史家として知られている。
この最終講義を取材するきっかけは、九大芸術工学部出身の若手設計者を18年に取材したこと。父が営む設計事務所、インターメディアに加わる形で15年、故郷の長崎県島原市に戻った佐々木翔氏(1984年生まれ)だ。その後、翔氏の紹介で福岡市内の2人の設計者に会い、翔氏をはじめ、同学部出身の若手設計者が頭角を現しつつあることを知った。
福岡で会った1人が百枝優建築設計事務所を主宰する百枝優氏(1983年生まれ)だ。百枝氏は2014年に福岡市で独立して以来、福岡市や長崎市を中心に設計実績を持ち、最近は台湾など海外へ活動の場を広げている。もう1人が、翔氏の実弟である慧氏(1987年生まれ)。18年に藤本壮介氏の事務所から独立、現在、福岡市内でKEI SASAKI architectsを主宰する。
よくよく聞くと、3人とも土居研究室の出身で、現在、九大の環境設計学科で非常勤講師を務めていることが分かった。さらに、土居氏が中心となって17年に立ち上げた九大大学院の環境設計グローバル・ハブのメンバーで、助教を務める岩元真明氏(1982年生まれ)も、同ハブで海外の大学との交流を深めるとともに、自身の設計活動を続けている。こうした “土居ワールド”は、どう築かれたのか。