2018年6月、翌年4月に入社する新卒学生の選考活動が解禁となった。経団連の指針をよそに、既に多くの学生が内定を得ているようだ。そんな中、記者が気になるのは採用活動に人工知能(AI)を活用する動きだ。
「AI採用の目的は学生と会話する時間を増やすことです。その点を改めてご認識いただけると幸いです」
5月のある日、こんなメールが届いた。送信元はサッポロホールディングス(HD)の担当者だ。同社が新卒採用のエントリーシート(ES)選考にAIを導入したという記事を執筆・公開した直後だった。
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AI採用を導入する理由は様々だ。選考業務を効率化する、ESのコピペを発見する、活躍が見込めそうな学生を予測する、内定を辞退しそうな学生を見分ける――などである。
学生にとっては、AI採用が不安材料になるかもしれない。人ではなく、AIに選ばれると感じるからだ。
そう思っていた中での先のメールだ。企業と会話する時間が増えることは、学生にとってはむしろメリットである。確かにそれは、同社の選考プロセスを見ると分かる。AIによってESが合格とされた応募者はすぐに面接に進む。不合格の応募者も人手でESを判定し、合格なら面接に進める。つまり、全ての応募者を人がどこかで判定するわけだ。
学生の半数以上がAIによる選考に否定的
学生がAI採用をどう考えているのか知りたい。そう思い立ち、人材サービス会社ディスコの武井房子キャリタスリサーチ上席研究員を訪ねた。武井氏らは学生に対して就職活動に関するモニター調査を実施している。
2018年3月に結果を発表した「3月1日時点の就職活動調査」では、初めてAI採用についての意見を学生に聞いた。調査には文系・理系を合わせて1258人が回答。2019年3月に卒業予定の大学3年生のほか、理系は大学院修士課程1年生も答えた。結果は次の通りだ。