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 嶺沢氏はサカタのタネに転職した2014年から2年間は現状調査をしながら信頼を取り戻すための「道具」を模索していた。2016年にコードを書かない超高速開発ツール3製品をレビュー。「OutSystemsを触って『これだ』と感じた」と振り返る。

 かくして嶺沢氏は「帳票やCSVデータ出力ぐらいの機能は数時間から数日で作れる」道具を手に入れた。嶺沢氏に3カ月遅れてシステム開発会社から転職してきた鷲沢柚香氏は「コーディングは大嫌い」と笑うが、その性分が超高速開発ツールに合っていた。今や嶺沢氏の頼もしい弟子、いや右腕だ。

情報システム部の鷲沢柚香氏
情報システム部の鷲沢柚香氏
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 2人はジャストシステムのWebデータベース作成ツール「UnitBase」とBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Actionista!」、アステリアのEAI(エンタープライズアプリケーション統合)ツール「ASTERIA Warp」も使いながら、2016年から新たなシステムを次から次へと開発してきた。既に100個近く新規開発したという。

ノーと言わないシステム部門

 開発や変更の依頼は「現場社員からの直の依頼でも受け付ける」という。利用部門の部長クラスの承認が要るのは、業務フローを変えたりビジネスロジックの数値を変えたりする「よっぽどのケース」だけ。嶺沢氏と鷲沢氏がモットーとするのは「ノーと言わないシステム部門」である。

 「頼んでもやってくれない、何してるのか分からない。そういう印象をシステム部門から取り去るため、小さな信頼を積み重ねる必要があった」。小さな信頼を積むために、動くシステムをすぐに納品できる道具を使って、あらゆる依頼にノーと言わなくて済むだけのスピードを持つことが必要だったわけだ。

 嶺沢氏は対外講演も積極的に引き受ける。記事や講演でサカタのタネの取り組みを知った他社の訪問も拒まない。この2年で10社が嶺沢氏を訪ねた。「名前を聞けば誰でも知っている企業ばかり」という。嶺沢氏が対外的に活動するのも信頼回復の一環だ。「外からサカタのタネのシステム部門の評判を高めたい」。

 信頼回復が一つの形となったのが1年前だ。「現場のニーズを親身に聴取し短期間でシステムを開発し利用部門の能率改善に大きく貢献」したとして、坂田宏社長から全社表彰を受けたのだ。受賞コメントを社内報に載せることになった嶺沢氏は、鷲沢氏への感謝をつづるとともに「社員の皆さん、もっと相談してきてください」と書いた。すると「あらゆる部署から要望や質問が来るようになった」という。

 嶺沢氏と鷲沢氏は利用者と開発の打ち合わせをする際、必ず最初に「使ってくれますか?」と意向を尋ねる。「使う」と返ってくれば、あとは利用者にプロセスの大まかなフローを書いてもらい、すぐに実装に取り掛かる。データモデルはインプットとアウトプットの関係から類推する。「すぐに使ってもらって間違いがあればすぐに直す」。

 2人で100案件の保守も担当する。伊藤忠テクノソリューションズのビジネスチャット「Tocaro」を使い、開発案件ごとにステークホルダーをグループにして要望や進捗を共有しているという。2人の間でチケット管理に使うのはオーストラリアのアトラシアン(Atlassian)のチケット管理ツール「Trello」である。