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地方で生み出す非日常感、musubu AI立地の妙

 首都圏からmusubu AIを訪れるには、飛行機や新幹線を使っても合計数時間の移動が必要となる。トライアルはこの一見不便な立地にも、有力企業を引きつける魅力を引き出している。

 まずコロナ禍にあえてリアルで集まる必要性があるのかといった疑問がわくが、入居企業はむしろイベントのリアル開催を歓迎している。異なる業界や自社の競合が集まる場でDXを共創するには、参加企業がそれぞれ主体的に参加して「本音」を持ち寄らなければ表面上の意見や感想の交換に終始して議論や実験が先に進まない。

 月に一度の宮若ウィークで合宿のように集まり、感染対策を施しながら夕食をともにすれば「『ここだけの話』や本音が自然に出てくる。考え方を共有できることで昼の議論もより積極的になる」(サントリー酒類の中村直人広域営業本部長兼酒類DXプロジェクトサブリーダー兼リテールAI推進チームシニアリーダー)という。

 musubu AIは教室の構造、オルガンや顕微鏡などの備品を残し、あえて小学校だった頃の面影を残している。窓に目を向ければ緑豊かな風景がすぐそこにある。都心にはなかなかない環境には「いい意味で非日常感があり、オープンな発想がしやすい」(日本ハム加工事業本部マーケティング推進部の島田叡氏)。さらにmusubu AIから10分強歩けば脇田温泉があり「空気も食べ物もおいしい。移動時間も含めてリセットできる」(花王グループカスタマーマーケティングのチェーンストア部門JBP推進部渋谷拓マネジャー)と好評だ。

あえて小学校の面影を残して非日常感を演出している
あえて小学校の面影を残して非日常感を演出している
(撮影:日経クロステック)
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 まだ発足間もないmusubu AIをDX共創の成功例と評するのは時期尚早だろう。メーカーや卸らもコストをかけて参画している以上、今後は相応の成果も求められる。だが少なくとも業種や競合の壁を越えた協力関係や、入居企業が前向きに参加できる環境を生み出した点はDX共創に取り組む企業にとって参考になるだろう。