1級土木施工管理技士の第1次検定(学科試験)が目前に迫ってきた。2020年は新型コロナウイルスの影響で試験が10月に延期されたが、21年は例年通り7月に実施される。
1級土木など施工管理技士の資格を巡っては、20年にその信頼性を揺るがす問題が発生した。東レの子会社の水道機工の他、西武建設やパナソニック環境エンジニアリングなど著名企業のグループ会社で、社員が自身の実務経験を偽って資格を不正に取得していた事実が次々と発覚した。
国土交通省の指示で各社がまとめた第三者委員会の調査報告書によると、いずれも企業側が社員に不正な資格取得を指示・推奨。社員には企業側が用意したリストから適当な工事を選ばせて、自身の実務経験として申告させていた。
中でも目を引くのが、水道機工の手口だ。子会社の社長を務めた同社の元役員が自ら不正な受験指導をしていた。元役員は、1級土木の実地試験の経験記述対策として模範解答例を作成し、社員に丸写しを指示。受験番号の近い社員同士には、同じ試験官の採点を受ける可能性が高いとみて、事前に解答内容をすり合わせ、同じ模範解答を書かないよう促していた。
こうした組織ぐるみの不正は、決して許されるものではない。ただ、各社の不正の経緯や動機を見ると、一部の悪質な建設会社による例外的な行為と切って捨てるわけにはいかない。
パナソニック環境エンジニアリングでは、受注件数の増加に伴い、工事現場の配置に必要な資格者の不足が常態化。その不足を補うために、不正に手を染めた。西武建設では、過去の経営悪化時のリストラで、多くの資格者が退職。その穴を埋めるために、工事の実務経験のない事務系職員にまで不正な資格取得を促した。