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 先日、経済産業省が2018年12月に公表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためのガイドライン」を読んでヒヤっとした。ガイドラインに、ビジョンの無いトップダウンのDX推進が失敗ケースとして示されていた。具体的には、「戦略なき技術起点の PoC (Proof of Concept:概念実証)は疲弊と失敗のもと」「経営者が明確なビジョンがないのに、部下に丸投げして考えさせている(「AI を使って何かやれ」)」というものだ。

 ヒヤっとしたのは、トップダウンのDXと聞いて、最近取材で聞いた話が思い浮かんだからだ。筆者は、この4月から日経 xTECH編集に異動し、日経デジタルヘルス関連の記事を執筆している。それまでは、医薬品や再生医療、バイオテクノロジーの専門媒体である日経バイオテクに5年間在籍していた。主な読者は製薬企業やバイオベンチャーであり、日経 xTECHの読者から見れば異業種の分野だった。

日経BPが主催したカンファレンス「テクノロジーNEXT2019」の様子。武田薬品工業の取締役ジャパンファーマビジネスユニットプレジデントの岩崎真人氏らが講演した。
日経BPが主催したカンファレンス「テクノロジーNEXT2019」の様子。武田薬品工業の取締役ジャパンファーマビジネスユニットプレジデントの岩崎真人氏らが講演した。
(写真:日経 xTECH)

 異動して製薬業界を別の角度から眺めてみて、気付いたことがある。製薬業界は、他の業界と比較してデジタル化が遅れているということだ。先日、日経BPが主催したカンファレンス「テクノロジーNEXT2019」の講演でも、製薬業界はデジタル化が進んでいない業界のワースト2位だと紹介されていた。

 理由はいくつかあるが、1つは業界がかなり保守的だからだと思う。製薬企業が製造して販売する医療用医薬品は、安全性と有効性を示して規制当局から承認を得て初めて販売できる。もし、製造方法を変えようとしたら、その度に申請して承認が必要になる。広告や営業促進の活動も、最近はかなり制限されている。少し特殊な業界なのかもしれない。