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米国ではいきなり200GW超の蓄電池導入計画が出現

 蓄電池の経済合理性が見えてきたことで、海外では20年ごろから大規模システムの導入が爆発的に増えています。

 例えば、米アップル(Apple)。同社は18年に導入した米カリフォルニア州の130MWの太陽光発電システムの隣に計240MWhのLIBを導入すると21年3月に発表しました(写真2)。

写真2 Appleが米カリフォルニア州サウスイースタンモントレーに建設中の大規模蓄電システム
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写真2 Appleが米カリフォルニア州サウスイースタンモントレーに建設中の大規模蓄電システム
場所はサンフランシスコとロスアンゼルスの中間付近。LIBの総容量は240MWh。写真の上半分にあるメガソーラーは、米California Flats solarが2018年に導入した約280MW(交流出力)分の設備。そのうち、130MW分をAppleが買い取っている。(写真:Apple) 

 AppleはLIBの製造元を明らかにしていませんが、「テスラのMegapack」だという一部報道があります。

 米カリフォルニア州のエネルギー会社であるPacific Gas and Electric(PG&E)も、既に出力ベースで350MW分の蓄電池を電力系統に導入していますが、21年8月~23年8月の間に約420MW分を追加導入する予定です 発表資料

 こうした計画は米国のあちこちで立ち上がっており、米国全体では、計約200GW超に上るようです(米国の国立研究所Lawrence Berkeley National Laboratory(LBNL)調べ)。そのうち、約140GW分が2020年の申請分になっています(図3)。驚くのはこれが出力ベースの集計値であること。米国での大規模蓄電池システムの多くは、充電または放電に4時間を想定したものが多いため、容量ベースでは800GWh前後に達している可能性があります。

図3 米国では2020年に蓄電池の電力系統への導入計画がいきなり3倍に
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図3 米国では2020年に蓄電池の電力系統への導入計画がいきなり3倍に
各電源(太陽光、風力、蓄電池、ガス火力、原子力、石炭火力、その他)の導入計画の推移。斜線部は再生可能エネルギーと蓄電池をセットで導入する計画。蓄電池の導入計画の多くでは、稼働予定時期を2022~2024年としている。(図:LBNL)

 米国以外ではオーストラリア、サウジアラビア、英国、リトアニアなどでGWh級の蓄電池の大量導入が始まっています。

 ちなみに日本でも2021年5月に、高砂熱学工業がテスラのMegapackを1基(3MWh)、茨城県つくばみらい市の同社の研究施設に導入したようです。

蓄電池と水素はパソコンのDRAMとハードディスク

 蓄電池のことばかり書くと、「蓄電システムとしての水素はどうなったんだ?」という質問が飛んできそうです。水素も蓄電に利用できますが、経済合理性があるのは中期、具体的には2日~1カ月ほどの期間での出力変動の平準化です。それ以上の長期となると、水素のままの貯蔵は合理的ではなく、アンモニアなどに変換したほうがよくなります。

 蓄電システムとしての蓄電池と水素の関係はパソコンのメモリー技術であるDRAMとハードディスクの関係に似ています。DRAMは高速応答ですが、長期的な記録メディアとしてはコスト高。一方、ハードディスクはコストは比較的安いですが、応答速度が遅い。蓄電池と水素は、DRAMとハードディスクのように組み合わせて使うのが合理的で、どちらかだけで使うと、DRAMだけで構成した非常に高額なパソコン、あるいはハードディスクだけで構成した動作が非常に遅いパソコンといったおかしなシステムになってしまいます。

 今、まさに市場で離陸しつつある蓄電池の電力系統への大量導入は、カーボンニュートラルを実現する上で、水素と共に必須となる施策の1つです。しかも、水素が本格化するのは数年~10年以上後と考えられますが、蓄電池はコスト上 “既に使える”技術。第5次エネルギー基本計画では、105ページの本文中42カ所で蓄電池や蓄電システムに言及と、数こそ多かったものの具体的な導入目標はまったくありません。第6次エネルギー基本計画では、よもや同じミスを繰り返すことのないよう願いたいです。

参考文献
1)経済産業省、「蓄電池戦略」、2012年7月.
2)NEDO 技術戦略研究センター(TSC)、「電力貯蔵分野の技術戦略策定に向けて」『技術戦略研究センターレポート TSC Foresight』、vol.20、2017年7月.