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 国内で高層純木造建築が次々に生まれている。2022年3月に大林組が設計・施工した地下1階・地上11階建ての「Port Plus(ポートプラス)」、21年2月にシェルター(山形市)が設計・施工した7階建ての「高惣木工ビル」が竣工した。23年11月には1階以外を木造とした15階建ての「東洋木のまちプロジェクト」が竣工する予定だ。

 実はこれらのうち、ポートプラスと東洋木のまちプロジェクトは免震構造。建物の地震対策技術として最も一般的な耐震構造が、日本の高層純木造建築ではいわば“空白地”になっている。

 ここを埋める可能性を秘めたプロジェクトが米国で進んでいる。耐震構造を採用した高さ約34m、10階建ての高層木造建築を実際に揺らす振動台実験「NHERI TallWood Project(以下、トールウッド・プロジェクト)」だ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)で実施する。

NHERI TallWood Projectに使用する10階建て木造試験体の外観パース(資料:NHERI TallWood Project Team)
NHERI TallWood Projectに使用する10階建て木造試験体の外観パース(資料:NHERI TallWood Project Team)
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 トールウッド・プロジェクトは全米科学財団(NSF)の助成を受けて、土木工学を専門とする米コロラド鉱山大学のシリング・ペイ教授ら約40者が進めている計画。米国では20年に建築基準であるIBCが改正されたことにより、18階建ての木造建築が建てられるようになった。このプロジェクトはその改正に伴って実施するものだ。当初計画から遅れ、22年7月上旬に試験体着工、22年12月に試験実施を予定しているという。

 1994年に起きた米カリフォルニア州ロサンゼルスのノースリッジ地震で観測された地震波で木造10階建ての試験体を揺らす。既に設計を終えた巨大木造試験体の構成を、2022年6月時点で公開されている資料などから見ていこう。

 試験体の構造は木造軸組工法だ。耐力部材に通した高強度の鋼棒やワイヤロープにプレストレスをかけて部材同士を圧着する「ポストテンション耐震技術」を適用する。

試験体の平面図。床はCLTパネル(資料:NHERI TallWood Project Teamの資料を基に日経クロステックが作成)
試験体の平面図。床はCLTパネル(資料:NHERI TallWood Project Teamの資料を基に日経クロステックが作成)
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 平面の大きさは9.7m×10m程度で、マスティンバー柱を14本立てる。柱サイズは最大でおよそ310mm×460mm。スパンは東西方向が約3m、南北方向が北から順におよそ3.4m、2.4m、1.2mだ。梁(はり)にもマスティンバーを使用する。サイズはおよそ310mm×340mmで全階共通。全ての柱と梁に2時間の耐火性能に相当する燃えしろを確保する。

 南北にCLT(直交集成板)パネルの壁を2枚、東西にMPP(超厚物合板)パネルの壁を2枚配置。いずれも厚さは約314mm。ポストテンション耐震技術を適用する。床は厚さ約175mmのCLTパネルでつくったユニットを組み立ててつくる。試験体の木材使用量は370m3だ。

CLTパネルでつくったユニットで床を構成する(資料:NHERI TallWood Project Team)
CLTパネルでつくったユニットで床を構成する(資料:NHERI TallWood Project Team)
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試験体のモデル(資料:NHERI TallWood Project Team)
試験体のモデル(資料:NHERI TallWood Project Team)
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 各階の高さは1階のみ約4mで、2~10階は約3.4m。壁と柱の間にはU字形の緩衝材を設置する。このほか実験では外壁や仕上げ材、階段も取り付ける。また補足的な重りとして、1.2m×2.4m程度の鋼製プレートを、各階の床に65枚程度固定する。