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 2022年3月に発生した福島県沖地震で路面に長さ約50mもの亀裂が生じたにもかかわらず、地震発生のわずか約16時間後に通行止めを解除した東北自動車道。道路の補修を指揮した東日本高速道路会社東北支社の取り組みを深掘りすると、迅速な復旧の裏に、日ごろからの無数の備えが浮かび上がってきた。

 地震が発生したのは3月16日の午後11時36分ごろ。辺りは暗く、道路の被災状況の確認は難航した。さらに、東北支社にはこんな報告も飛び込んできた。「福島県内の停電により、道路補修に使うアスファルト合材の製造工場が稼働しない」

東北自動車道の国見インターチェンジ(IC)─白石IC間の下り線では、路面に長さ50mにわたる亀裂が生じた。福島県伊達市内にあるアスファルト合材の製造工場が舗装材料を出荷し、短時間で補修できた(写真:東日本高速道路会社)
東北自動車道の国見インターチェンジ(IC)─白石IC間の下り線では、路面に長さ50mにわたる亀裂が生じた。福島県伊達市内にあるアスファルト合材の製造工場が舗装材料を出荷し、短時間で補修できた(写真:東日本高速道路会社)
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 だが東北支社は災害時に緊急作業を依頼できるよう、建設会社と協定を結んでいた。17日午前0時ごろには補修場所を特定する前に、建設会社を現地へ派遣した。舗装材料も備蓄していたため、万一工場でアスファルト合材が製造できなくても補修は可能な体制だった。

 東北支社と各区間を管轄する管理事務所との情報共有も円滑に進んだ。大きな被害が判明した東北道や常磐自動車道の現場には他県の事務所が契約する建設会社を応援に手配するなど、機動的に対応した。

 東北支社は各地の事務所も含めて年に一度、災害時の初動対応に関する訓練を実施する。日ごろの備えがあったからこそ、短時間で道路の補修を進められたのは間違いない。