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 政府は2021年6月1日にマイナンバー制度の個人向けサイトであるマイナポータルをリニューアルした。平井卓也デジタル改革相は児童手当の現況届(更新手続き)が簡単に申請できる機能を追加したと華々しく紹介した。ところが、早くも利用者からは手厳しい感想が目立つ。

 政府はマイナポータルの改善に注力してきた。スマートフォン向けアプリケーションの画面や操作方法、アプリを使いやすくするための画面構成やサービス選択の流れを抜本的に見直したという。政府は全自治体がマイナポータルでオンライン申請の受け付けができる仕組みも用意して、マイナポータルで様々な手続きができるようにする計画だ。児童手当の現況届はリニューアルの第1弾である。

マイナポータルのリニューアル
マイナポータルのリニューアル
(出所:内閣府大臣官房番号制度担当室)
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アプリが自動処理しない「謎仕様」

 ところが、SNS(交流サイト)のTwitterなどにはスマホで入力する手順に戸惑ったという書き込みが多い。特に児童手当の現況届の申請者から「電子申請したら今年一番腹が立った」「提出年月日をわざわざ選ばせる謎仕様」などと、平井デジタル改革相や河野太郎規制改革相に批判の矛先を向ける書き込みも目立った。

 児童手当の現況届は申請者が毎年提出するものだ。市区町村は同手当を申請した住民の受給資格や所得などを確認して、6月分以降、翌年5月分までの支給可否などを審査する。そのため、申請者は毎年6月末までに提出する必要がある。この手続きがスマホでできる。

 しかし簡便とはいえないようだ。市区町村によっては申請者がマイナンバーカードで読み込ませたはずの氏名などを再び手入力させたり、プルダウンメニューから提出した年月日を選ばせたりする必要があるなど、アプリが自動的に処理すれば不要になるとみられる操作が少なくない。

 実は市区町村の複数の自治体IT担当者も問題点を指摘する。そもそも現状ではマイナポータルのリニューアルで政府が用意した現況届の申請フォームは導入が間に合わず、ほとんどの自治体は使っていないという。電子申請を受け付けていない自治体もある。

 政府は自治体に対して、マイナポータルのリニューアルに合わせて2021年5月中にマイナポータルに入力されたデータを自治体が受け取るための仕組みが機能しているのかテストの完了を求めていた。ところが自治体のIT担当者によると、自治体向けマニュアルが不完全なまま仕様変更が一部伝わっておらず、テストが完了しなかった自治体もあったようだ。