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「人には聞きづらくても、AIになら聞ける」

 AIで減らせる最後のKは「気兼ね」。顧客の問い合わせに応答するチャットボットなどがユースケースにあたる。最初の2つのKが過去のデータを学習させ客観的な指標を算出するものに対し、3つめのKの「気兼ね」はコミュニケーションや心理に関するものだ。

 「人には聞きづらいこともAIになら聞ける」。チャットボットや対話ロボットを使う顧客のメリットを最もよく表した言葉といえる。AIが顧客の疑問を解消することで自社サービスへの動線にしたり、ECサイトでの販売に活用したりする事例が増えている。

 中古書籍販売サイトを手がけるブックオフオンラインは、AIチャットボットを2017年7月から9月まで試験的に運用した。従来は人間のオペレーターが電話やメールで「雑誌は売れますか」「買い取りは何点からできますか」など買い取りに関する質問に答えていた。試験運用ではチャットボットが簡単な問い合わせを肩代わりした。

 同社はサイトで取り扱う商品である本を仕入れる手段である「買い取り」を生命線と捉えており、オペレーターに加えAIを導入することで顧客と同社との接点を増やす狙いがあった。

 AI導入の結果として、人間による対応件数が4~6月の3カ月間より6.4%減った一方、「買い取り」の申込件数は7.9%増える効果が得られたという。「メールや電話で聞くのを躊躇していた顧客が、気軽に聞けるチャットボットでは手続きの途中で離脱せずに買い取りまで進めてくれたのでは」とカスタマーコミュニケーション部の栗田優美氏は分析する。

 単純な質問はAIに答えさせる一方で、個々の利用者によって状況が変わるものや複雑な質問については、人のオペレーターにつなげることも重要だという。

Pepper、待ち時間に体の不調を聞き出す

 AIを活用したロボットにも同様に「気兼ねを減らす」効果がある。ソフトバンクロボティクスのロボット「Pepper」(ペッパー)が、「未病」の分野で使われているのをご存知だろうか。未病とは、特定の病気になってから治療が必要になる前に、「食欲がない」「なんとなく疲れやすい」など病気の予兆が出たうちから早期対応することで、健康を維持する考えだ。

 「Pepperが病院の待ち時間に患者の体の具合を聞き、病気の予兆を見つける取り組みが始まっている」とソフトバンクロボティクスのPepper事業本部長の蓮実一隆取締役は話す。

ソフトバンクロボティクスのコンテンツマーケティング本部長兼Pepper事業本部長の蓮実一隆取締役
ソフトバンクロボティクスのコンテンツマーケティング本部長兼Pepper事業本部長の蓮実一隆取締役
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 一部病院の待合室に導入されるPepperで、疾患啓発や健康チェックができる機能が活用されている。例えば風邪の診察などで訪れた患者に対し、まずPepperが「健康チェックしませんか」と呼びかける。続いてPepperに搭載されたタブレットにいくつかの簡単な質問を提示。「最近眠りが浅い」といった患者の症状を発見する。

 患者の回答内容から疾患の可能性がある場合は、「睡眠時無呼吸性症候群の診察をおすすめします」などと提示する。実際に診察するのは医者で、Pepperは患者と医者のつなぎ役を果たす。疾患の可能性がある場合は検査をして、早めに治療や薬を処方することで疾患が深刻になる前に治せる。

 「医者や看護師に対してはわざわざ言うほどではないかな、ということも、Pepperに対しては不思議なほど教えてくれる。Pepperは患者に気づきを与える存在」(蓮実Pepper事業本部長)。

 銀行もPepperに同様の期待をかける。与信の判定に必要な情報である預金額や年収などは人間のスタッフに対しては言いづらいが、Pepperが聞くと話してくれる利用者も多いという。銀行窓口で金融や保険のサービスの提案をするPepperが、対話した内容を基に、個々の顧客に沿った提案ができるという。

 「過剰在庫」、「混雑」、「気兼ね」。人だけでは解決できなかったこれまでの課題を、AIの助けを借りて解決しようとする取り組みが相次いでいる。人とAIが協調し、3つのKをなくしてしまう日もそう遠くないかもしれない。