約185万台もの国内生産が消滅──。2018年を基準に2021年までのわずか3年間で、日本の自動車メーカー8社の国内生産台数が2割も減っていることが分かった*。海外市場の成長と国内市場の低迷という従来の影響に、新型コロナウイルス禍や部品不足などの不測の事態が加わった。売り上げの国内依存度が高い中小規模の部品メーカーにとっては、事業継続がますます難しくなっている。自動車の国内生産は持続可能性の面で危機的水準に達したといえる。
2021年における8社の世界生産台数の合計(約2355万台)は、2018年(約2870万台)に比べて約515万台落ち込んだ。このうち国内生産の落ち込みは35.8%を占めることになる。
トヨタ自動車は、かねて「国内生産300万台」の維持を目標に掲げてきた。その理由について同社は、トヨタ車を支える部品を提供する部品メーカーの経営を成り立たせるためと説明する。ところが、2020年と2021年の2年連続で、国内生産が300万台を割った。同社の2021年の国内生産台数は約288万台だった。
トヨタ自動車の国内生産比率は2021年で33.5%。8社の平均である31.4%を上回っている上に、生産台数の規模を踏まえると、国内生産(すなわち日本の雇用)にかなり貢献していると言える。それでも、国内生産比率は2018年の35.3%からは若干低下している。同年と比べて2021年の国内生産台数は約26万台減少した。
3年前と比べて国内生産台数を最も大きく減らしたのは、日産自動車だ。43万台以上も減少している。業績回復の途上にある同社は、膨れ上がった世界生産台数を絞って財務基盤を整えつつある。その一環で国内生産比率も引き下げており、その比率は2018年の17.0%から2021年の13.9%まで低下した。同様にホンダも国内生産比率を2018年の16.6%から2021年の14.9%まで下げている。
「部品の中国シフト」の声
「国内生産と言いながら、これではまるで中国の部品で出来たクルマではないか」。ある2次部品メーカーの経営者は嘆く。日本の工場で組み上げた日本車であるにもかかわらず、中国製部品の割合が大きくなっているからだ。いわゆる部品の「中国シフト」である。
これまでに国内製から中国製に切り替わった部品は、樹脂部品やゴム部品といった最終形状が金型で決まる部品が多かった。最近はプレスで造る部品にまでその対象が広がりつつあるという。
金型はCAD・CAMのデータがあれば比較的簡単に造れる。これに対し、プレス部品は鋼板を折り曲げたり、深く絞ったり、切ったりする必要があり、工程が複雑な分、国内の部品メーカーに分があった。ところが、ここに来てプレス部品も中国メーカーへの転注(発注先の変更)が増えているというのだ。
背景にあるのは、自動車販売に関する中国市場の成長と日本市場の衰退だ。部品のものづくりは規模が物を言う面がある。言うまでもなく、中国は現在世界最大の自動車市場で、2021年の販売台数は2600万台を超えている。一方で、日本の販売台数は450万台を割った。こうした状況から「日本市場を中国市場の一部にしようとする見方が日本の自動車メーカーに出てきている」(前出の2次部品メーカー)というのだ。
どういうことかといえば、日本市場の販売分も含めて中国工場で一気に造ってしまおうという考えが経営側にあるということだ。中国市場と日本市場を合算した販売台数のクルマを中国工場で組み立てて、量産効果を目いっぱい働かせる。すると、コスト競争力で優位に立つことができ、業績向上につながるという寸法だ。