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 「ホンダが国内でセダンの販売から撤退する?」――。寝ぼけまなこで日本経済新聞のニュースを斜め読みしていた筆者は驚きのあまり、椅子から転がり落ちそうになった。慌ててもう一度文章を読み直す。いや、なんと言うことはない。筆者の早とちりだった。

 正確には、『2020年夏に旗艦車種「シビックセダン」など2車種の生産を終え、店舗の在庫がなくなり次第販売も取りやめる。』(日本経済新聞電子版2020年6月15日報道の記事から引用)といった内容で、ホンダがセダンの販売車種を絞り込むというニュースだった。セダンの販売から撤退するわけではなかったので、ほっと胸をなで下ろした。

 それでもやはり、日本の大手自動車メーカーが国内のセダン市場を見限るような決断を下したといった話を聞くのは、セダン好きな車マニアとしてはショックが大きい。特に小型から中型のセダンが冷遇されている姿を見ると悲しくなってくる。「また1つ、自分が乗りたいと思える車種がなくなってしまうのか」――そんな気になってしまうのだ。

2020年1月に部分改良を発表したホンダのシビック セダン(撮影:日経Automotive)
2020年1月に部分改良を発表したホンダのシビック セダン(撮影:日経Automotive)
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 思い起こせば、ホンダが国内市場においてシビックセダンの販売を中止するといった予兆は、すでにあちらこちらに現れていたように感じる。例えば、2020年1月に幕張メッセで開催された東京オートサロンでのことだ。

 ホンダは部分改良を施したシビックのセダンとハッチバックを同イベントで披露。同イベント会場で展示した。だが、シビックのセダンはどこかひっそりと見せていたように感じた。

 モータースポーツ色が強いイベントだっただけに、華々しくメインのステージをシビックのセダンが飾るということは難しいのだろうが、それでも今振り返ると少し扱いがぞんざいだったように思えてならない。

 加えて説明員のつぶやきだ。「シビックのセダンは北米ではまだ人気があるのだが、国内では厳しい」と力なく話していたのを思い出した。このときすでにセダンは背水の陣だったのかもしれない。

 シビックのセダンといえば、かつてはホンダの旗艦車種であり、多くの家族が乗ったであろう名車だったと感じている。その栄光は、もはや見る影もないように筆者の目には映った。

日産はセダンに目もくれず

 セダンが売れないといった悩みは、ホンダに限ったことではない。トヨタ自動車も小型から中型のタイプではセダンよりも、ハッチバックやワゴンといった車種に力を注がざるを得ないのが、昨今の販売傾向といっても過言ではない状況だ。

 例えば、2019年9月に全面改良した「カローラ」の新車発表会では説明員が、「若年層からはワゴンタイプのカローラツーリングに人気が集まっている」と述べた。

 企業存続の危機にひんしている日産自動車の場合はもっと明確だ。2020年5月に発表した中期経営計画「NISSAN NEXT」では、今後18カ月の間に投入するとした12の新型車のラインアップのシルエットを公開。しかし、その中にセダンが見当たらない。日産にとってセダンは事業立て直しのための即戦力にはならないというわけだ。

日産自動車の中期経営計画「NISSAN NEXT」で公開した動画に出てくる新型車のシルエット(出所:日産自動車の動画をキャプチャー)
日産自動車の中期経営計画「NISSAN NEXT」で公開した動画に出てくる新型車のシルエット(出所:日産自動車の動画をキャプチャー)
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 このまま、国内の市場から小型から中型のセダンが消滅してしまうのだろうか。その答えの鍵はトヨタが握っていると筆者は考える。