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 「静かだな」――。雨が降りしきる6月のある日、東京都江東区の物流施設を訪ねた筆者は、無人で動き回る車両の静粛性に思わずこうつぶやいてしまった。施設の一角を使って披露された無人フォークリフトとAGV(無人搬送車)との連携作業のデモ(図1)。無人フォークリフトが荷棚からパレットを取り出し、それをAGVが次の工程まで運ぶ。この見事な連携には、これまでの倉庫や工場にはなかったスマートさが感じられた。

図1 ZMPが披露した自動物流システムのデモ
図1 ZMPが披露した自動物流システムのデモ
無人フォークリフト(左)とAGV(右)が連携し、段ボールを載せたパレット(中央)を運ぶ。稼働中は注意喚起の音声を発するが、両車両とも電動のため稼働音そのものは静かである。(撮影:日経クロステック)
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 デモを披露したのは、ロボット開発スタートアップのZMP(東京・文京)だ。クルマ向け自動運転技術のイメージが強い同社であるが、それは今や昔の話。現在は、物流向けの自動化技術が収益の柱になっている。

 同社の2019年通期の売上高は約15億円。2020年は、そのうち半分以上を物流向けの売り上げが占める見通しだ。主要事業は、自動運転部門、物流部門、サービスロボット部門の大きく3つ。従来は自動運転部門で売り上げの8割以上を稼ぐ一本足打法だったが、2018年を境に物流部門が頭角を現してきた。

 同社は2017年、運営方針の違いからディー・エヌ・エー(DeNA)と業務提携を解消。そこからは、独自路線で自動運転の技術開発を追求してきた。既に、1人乗りの低速小型車両を完全自動で走らせるなど、技術の実用化は進めている。ただ、自動運転車両の普及は安全面からしばらく先になるとの見方が強く、同技術が一朝一夕で稼ぎ頭になるわけではない。

 ZMPとしては、さらなる開発投資のために足元の利益を確保しなくてはならない。そこで注力し始めたのが自動運転技術を倉庫など物流の現場に適用すること。2001年の創業から20年弱蓄積してきた自動運転の認知・判断・操作の技術を転用し、早期の収益化を目指した格好だ。

新型コロナ対策の救世主へ

 この華麗なる“変身”には追い風も吹いた。物流業界は労働環境などの要因からスキルを持つ人材の確保が難化し、一方で、Eコマース(電子商取引)の需要拡大で仕事量は増え続ける。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大がこの厳しい状況に拍車をかける。物流施設内で働く作業員の感染を防ぐため、「3密」(密閉・密集・密接)を回避する施策は急務となり、事業者は施設内の自動化にかじを切っている。