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 日本型ボールパークの代名詞になると思われる「北海道ボールパーク」。2023年3月の新球場開業に向け、北海道北広島市で建設が進む。事業主体のファイターズ スポーツ&エンターテイメント(札幌市)は、矢継ぎ早に施設内容を公表している。22年6月19日には工事中の施設内を一般に初公開した。

 ボールパークという施設形態に、厳密な定義はない。本来は「球場」そのものを指す言葉だが、周囲にパーク的な要素がある場合や追加した場合に、合わせてボールパークと呼ぶ例がある。また、建物としての独立性が高い場合には、パーク化されたスタジアムをそう呼ぶ例もある。

北海道ボールパークFビレッジに建設中の新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」。設計を大林組とHKS、施工を大林組・岩田地崎建設JVが担当(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
北海道ボールパークFビレッジに建設中の新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」。設計を大林組とHKS、施工を大林組・岩田地崎建設JVが担当(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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2021年12月21日には、レフトスタンドに建設するタワー型特別エリアを「TOWER 11(タワー・イレブン)」と命名すると発表(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
2021年12月21日には、レフトスタンドに建設するタワー型特別エリアを「TOWER 11(タワー・イレブン)」と命名すると発表(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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21年12月21日には「TOWER 11(タワー・イレブン)」の一部フロアに入る温浴・サウナ施設の概要を発表。運営をSQUEEZE(東京・港)、サウナ監修をTTNE(同)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
21年12月21日には「TOWER 11(タワー・イレブン)」の一部フロアに入る温浴・サウナ施設の概要を発表。運営をSQUEEZE(東京・港)、サウナ監修をTTNE(同)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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22年3月10日にはヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)によるクラフトビール醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」の出店を発表。センターバックスクリーンに同種施設ができるのは世界初となる(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年3月10日にはヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)によるクラフトビール醸造レストラン「そらとしば by よなよなエール」の出店を発表。センターバックスクリーンに同種施設ができるのは世界初となる(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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 国内のプロ野球12球団の大半は、米国野球界が多彩な楽しみ方のできる球場をつくる動きに目を向け、施設を更新するなかで同様のボールパークを目指すとうたってきた。ホームとする球場の歴史や立地も関係し、整備のビジョンを明確に示しているか否かには差がある。

 北海道日本ハムファイターズが札幌ドームからの移転後に本拠地とする北海道ボールパークの場合、周辺を含めて「北海道ボールパークFビレッジ」と呼び、約32万m2の敷地全体をビレッジ(村)として構想している。事業手法上、公園予定地だった場所を公園区域と公園外区域に分けて用地を設定。公園区域では減免措置などを講じる一方、公園外区域では減免措置のない代わりにホテルや住宅の整備を可能としている。全体で見ると、確かにパークの域を超えている。

22年2月24日には、キッズラボグループ(東京・豊島)による認定こども園「キッズラボ ボールパークこども園」を発表。設計・デザインをチームラボアーキテクツ(東京・千代田)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年2月24日には、キッズラボグループ(東京・豊島)による認定こども園「キッズラボ ボールパークこども園」を発表。設計・デザインをチームラボアーキテクツ(東京・千代田)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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22年2月25日には、日本エスコン(東京・港、開発)、ハイツ・ヴェラス(札幌市、シニアレジデンス運営)、ミライシアホールディング(同、メディカルモール運営)によるシニアレジデンスとメディカルモールを発表。シニアレジデンスには約290室を設ける(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年2月25日には、日本エスコン(東京・港、開発)、ハイツ・ヴェラス(札幌市、シニアレジデンス運営)、ミライシアホールディング(同、メディカルモール運営)によるシニアレジデンスとメディカルモールを発表。シニアレジデンスには約290室を設ける(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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22年5月26日には藤井ビル(札幌市)による1棟貸し切りのプライベートヴィラ(全9棟)を発表。設計を再生建築研究所(東京・渋谷)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年5月26日には藤井ビル(札幌市)による1棟貸し切りのプライベートヴィラ(全9棟)を発表。設計を再生建築研究所(東京・渋谷)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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22年6月8日には、中核となる商業施設「THE LODGE(ザ・ロッジ)」を発表。設計・施工を三五工務店(札幌市)、共同設計を波多野・高山建築設計事務所(同)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年6月8日には、中核となる商業施設「THE LODGE(ザ・ロッジ)」を発表。設計・施工を三五工務店(札幌市)、共同設計を波多野・高山建築設計事務所(同)が担当する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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22年6月27日には、3つのガーデンの概要と、ガーデンづくりに参加する「ガーデンサポーター」の募集を発表。ランドスケープは、高野ランドスケーププランニング(札幌市)が監修する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
22年6月27日には、3つのガーデンの概要と、ガーデンづくりに参加する「ガーデンサポーター」の募集を発表。ランドスケープは、高野ランドスケーププランニング(札幌市)が監修する(資料:ファイターズ スポーツ&エンターテイメント)
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 こうした多様な集積は、球団を誘致した北広島市長の決断の下、様々な行政サポートがなされるなかで実現した面がある。現市政を超える長期にわたり、いかに新都市(村)として育ち得るか。公民連携時代の試金石となる開発プロジェクトだ。

「まちなかの核」になる横浜タイプ

 国内におけるボールパークの先駆けは、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地である「楽天生命パーク宮城(宮城球場)」とされる。2000年代中盤、50年以上の歴史を持つ県営球場を、スポーツ観戦のエンターテインメント性に着目して“野球公園”に刷新したものだ。鹿島が改修設計を手掛けた。

 09年には、宮城球場の存在や米国事情などを参考にした「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島(広島市民球場)」が広島東洋カープの本拠地として誕生。仙田満+環境デザイン研究所が設計を手掛けた。

MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島(写真:本誌)
MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島(写真:本誌)
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MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島に増設されたグループ用の客席コーナー。ユニークな趣向として知られるブリッジ上の客席(写真左奥)は開業時から設けられている部分(写真:本誌)
MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島に増設されたグループ用の客席コーナー。ユニークな趣向として知られるブリッジ上の客席(写真左奥)は開業時から設けられている部分(写真:本誌)
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 同スタジアムのあるエリアでは、16年に「広島ボールパークタウン」がグランドオープンしている。球団が使う屋内練習場の他、結婚式場、分譲マンションなどが球場を囲む。ただし、自由な発想で客席を更新しながらパークの魅力を高めてきたスタジアム内と比較し、滞在して楽しめるエリア全体のコンセプトを感じさせるまでには至っていない。

 一方、街中の公園内施設として独自の道を歩むのが、横浜DeNAベイスターズが本拠地とする「横浜スタジアム(ハマスタ)」。横浜DeNAベイスターズと横浜スタジアムが提唱した「コミュニティボールパーク化」構想は、17年度のグッドデザイン賞を受賞した。