全2583文字
PR

 実は2週間ほど、休みをもらっていた。

 2020年に日経BPに新卒入社してから、1年がたった。記者は、入社当時からリモートワークが導入された「リモートネーティブ世代」の1人だ。記事の取材や執筆、会議などあらゆる業務がPC1台で完結するため、会社に出向くことはほとんどない。入社当初は「出勤しなくても問題ない」という事実に喜びを隠せなかったが、その状況が思わぬ副作用をもたらしてしまったらしい。仕事のペースがうまくつかめず、体に不調を来してしまったのだ。

 入社時点で、リモートワークにはすぐに順応できていた。新型コロナウイルス感染拡大での会社や取材先の対応が柔軟だったこともあったが、それだけではない。もともと、対面での仕事を知らなかったため、「そういうものなのか」とすんなり受け入れられたからだ。

 実際、リモートワークには利点も多い。その1つが、移動時間の短縮だ。これまで遠隔地への取材などで取られていた移動時間が、リモートワークであればゼロになる。米Zoom Video Communications(ズーム・ビデオ・​コミュニケーションズ)のオンライン会議ツール「Zoom」や、米Microsoft(マイクロソフト)の同「Teams」などを使えば、取材は自宅で完結する。社内会議などもTeamsでやりとりすれば、わざわざ出社する必要もなくなる。

漠然とした現実感のなさ

 一方、この1年間で、リモートワーク体制への課題も感じた。仕事に対する、漠然とした“現実感”のなさが拭い切れないという点だ。それを生んでいるのは、①円滑なコミュニケーションが難しい、②製品などの実物が見られない、という点が大きいだろう。

 まず、雑談などのコミュニケーション不足だ。リモートワークでは、社内や取材先とのやりとりは、Teamsやメールなどの画面上になるからだ。ビデオやチャットを通した会話では、その場の雰囲気などがつかみづらいため、何気ない会話が生まれにくいように感じる。そのため、生身の人間とやりとりしている感覚が希薄になってしまう。

 製品の実物が見られないというのは、この業界ならではの悩みかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、大規模展示会もオンライン開催が増えてきた。動画や文章などで新製品の紹介はあるが、いまいちピンと来ないことも多い。「実物を見られればイメージが湧きやすいのに」と何度思ったことか。

 21年5月ごろに体が不調を来した一因は、こうした現実感のなさだった。当時執筆していたのは、日経エレクトロニクス2021年6月号の量子インターネット特集だ。「絶対に破られない」とされる量子暗号通信の記事に取りかかっていた。