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 日立製作所の「Lumada(ルマーダ)」、NECの「NEC the WISE(エヌイーシー ザ ワイズ)」、米IBMの「IBM Watson(アイビーエム ワトソン)」――。IT業界にかかわるプロフェッショナルなら耳にしたことはあるだろう。では、それぞれの名称について正しく理解しているだろうか。実は、大手IT企業の広報担当者でも、競合他社のブランドやサービスについて十分に把握できていないことがある。それほど「難解」ということだ。

 IT分野は、技術のはやり廃りのサイクルが早い。特定の技術が普及すると、対応するサービスを各社がこぞって提供するため、筆者のようなIT媒体の担当者はキャッチアップするのにも一苦労だ。また、名称に造語が用いられがちであり、認知に時間がかかる要因となることもある。

 日立やNEC、日本IBMの大手3社においてIT分野のブランドネームが、いまどう運用されているのかを調べた。

Lumadaブランドを「旗」に掲げる日立

 IT企業が保有するブランドで断トツに知名度が高いのは、Lumadaだろう。日立は2016年、IoT(インターネット・オブ・シングズ)プラットフォームとしてのLumadaの提供を開始した。当時のリリースによると、Lumadaは「オープンで汎用性の高いプラットフォームであり、事業領域ごとのIoT関連ソリューションを迅速に開発できる」とある。

 Lumadaは、「Illuminate(イルミネート、照らす・解明する・輝かせる)」と「Data(データ)」を組み合わせた造語だ。顧客企業のデータに光を当て、輝かせることで、新たな知見を引き出し、経営課題の解決や事業の成長に貢献していくとの思いを込めた。

 それがいまや、同社が提供する社会イノベーション事業の実現手段の象徴になっている。2021年のリリースを眺めると、「日立は、モビリティ、ライフ、インダストリー、エネルギー、ITの5分野でLumadaを活用したデジタルソリューションを提供する」と表現されている。IT分野のみならず、事業横断的に用いるデジタル事業推進の「旗」のようだ。

「Lumada(ルマーダ)」の概要
「Lumada(ルマーダ)」の概要
(出所:日立製作所)
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 日立のIT部門でブランド管理を担当する善波宏幸システム&サービスビジネス統括本部コミュニケーション戦略部部長代理は、次のように話す。「Lumadaは、日立の国際ブランドとして立ち上げた。造語のため、ブランド周知のためのプロモーションが重要と考えている」。

 一方、個々のITサービスの名称は分かりやすさにこだわっているという。「2000年代後半にブランド乱立の問題が発生し、2012年ごろからはブランドネームを付けずに一般名称で表現するようにした」(善波部長代理)と説明する。

 その一例が、IoTやAI(人工知能)による「鳥獣害対策支援サービス」や「IoTデータモデリングサービス」、AIによる「感性分析サービス」などで、読めば内容が想像できるような名称にしたとする。

 ただし長年にわたり提供し、顧客企業に浸透しているサービスの名称は変えない。例えば、1994年に提供を開始した統合システム運用管理ソフトウエアの「JP1」である。ファーストバージョンの開発コード名「JUPITER(木星)」から「J」と「P」を取り、ファーストの意味で「1」を付けた。名称の由来は別として、IT業界においてJP1の認知度は高いという。