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 どう安全性が高まったのか、いまいちぴんと来ない――。

 リニア中央新幹線の大深度地下トンネル工事の安全性に関するスライド資料に目を通して、疑問が生じた。2020年10月に東京都調布市で起こった陥没事故を受け、JR東海が21年6月に都内で開催した住民説明会で使われたものだ。

 資料には事業の概要やシールドトンネル工事の仕組み、外環道での陥没事故の分析や安全性を高める自社の取り組みなどが並ぶ。気になったのは、外環道の事故を踏まえて同社が施工管理を強化するために示した4つの対策だ。

外環道で起こった陥没事故を踏まえて、施工管理における4つの強化策を示した(資料:JR東海)
外環道で起こった陥没事故を踏まえて、施工管理における4つの強化策を示した(資料:JR東海)
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 具体的には、(1)添加材の適合性の確認、(2)泥土圧の管理、(3)泥土の性状の確認、(4)取り込み量の管理の強化――だ。いずれも添えられた説明を読む限り、外環道で陥没事故が起こる前に全く手掛けていなかったわけではなさそうだ。あくまで既存の取り組みの質を高めたことは分かる。だが新たな工夫によって、どのように陥没事故を避けやすくするのか。後ろのページに詳細な説明はあるが、説明会に参加した住民はすぐに把握できないのではないかと感じた。

 例えば(3)では、「チャンバー内から泥土を採取し、その性状を確認」「北品川工区のシールドマシンに、チャンバーから泥土を直接採り出すことができる土砂サンプリング装置を搭載」と補足している。加えて後ろのページには「従来のシールドマシンには無い新たな装置」との説明もある。土砂サンプリング装置を搭載したことで、土砂をチャンバー内から直接採取できるようにした。このことが施工の安全性を高める。

 だがシールド機を使ったトンネル工事では通常、掘削に応じて土砂をチャンバーに接続したスクリューコンベヤーで排出して抜き取る。つまり、掘削した土砂は得られる。チャンバー内から土砂を抜き取ることと、コンベヤーで排出した土砂を採取することとは、一体何が違うのか。多くの住民は恐らく分からないだろう。