「これから企業説明会を開催します。参加者は集まってください」。平日の昼過ぎ、渋谷のとあるビル。広々としたフロアに担当者が声を掛けると、それまでMacBookに向き合っていた人が次々に席を立ち、会議室に入っていった。
彼ら彼女らは、エンジニア教育や転身支援を手掛けるdivが運営するプログラミング教育コース「TECH::EXPERT」の受講生。エンジニアとしての就職を目指して、一からプログラミングを学んでいる。それまで異業種で働いていたプログラミング初心者が一念発起して仕事を辞め、TECH::EXPERTの門を叩くケースも多い。短期集中型なら10週間で、Webアプリエンジニアとして働けるレベルの技術を身に付けられるという。
TECH::EXPERTは転職も支援しており、その一環でほぼ毎週、企業説明会を開催している。TECH::EXPERT卒業後の就職先を探す受講生と、卒業生を獲得したい企業とのマッチングの場だ。ITエンジニア不足が叫ばれるなか、「1回の開催につき内定が1人出る」(divの張ヶ谷拓実執行役員)ほどの成果だ。いったいどんなやり取りが交わされるのか、記者も参加させてもらった。
記者が取材した日、説明会には3社が登壇した。動画配信サービスを運営するU-NEXT、ネット通販向けシステムを手掛けるテモナ、介護向けIoT(インターネット・オブ・シングズ)デバイスを展開するトリプル・ダブリュー・ジャパンである。それぞれが10分ほど自社を紹介したあと、グループに分かれて質問タイムが始まった。
「どんなエンジニアを求めているのか」「貴社の強みは」――。受講生からは、次々に質問が出る。印象的だったのは、「自分の知識はまだ十分ではないが、入社後に教育を受けられるか」「入社前にどんなスキルを身に付けておくと仕事の役に立つか」など、スキルアップへの意欲がうかがえる質問が多かったことだ。初心者から猛勉強中の段階で、今は技術力に自信がない。だが今後、技術を高めてエンジニアとして活躍したい。そんな気持ちが伝わってきた。
「これまでどんな仕事をしていたの?」。企業の担当者が受講生にこう問いかけるシーンも見られた。演劇をやっていた、アパレル業界にいた、木工を手掛けていた――。ITとは縁遠そうな業界からエンジニアへの転身を決意した理由や経緯に、企業の担当者は興味深そうに聞き入っていた。