読者の皆さんは「ITストラテジスト試験」をご存じだろうか。情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験のうち「高度試験」区分に該当し、IT業界では「IT関連の国家試験において最難関」と評する人もいる試験だ。例年、合格率は15パーセント前後となる。
記者は2022年4月に本試験を受験し、6月下旬に合否の確認を済ませた。以下では受験にあたり準備したことや、試験制度について感じた課題をまとめる。
DX推進者向けの試験
ITストラテジスト試験はざっくり言えば、企業のIT戦略を策定・推進する立場にある人向けに、その能力を測る試験だ。職種としてはコンサルタントや企業の経営企画、IT企画担当者などをイメージすればよいだろう。合格にはマークシート形式で知識を問う午前IとII、論述試験の午後IとII、計4つの試験で一定以上の成績を収める必要がある。特にIT戦略について3000字前後で書く午後II試験は、具体性のある記述が求められ、容易に突破できない。
近年DX(デジタルトランスフォーメーション)ブームが後押しし、本試験の人気は高まっている。日経クロステックが2021年に調査した「IT資格実態調査」の「これから取りたいと思うIT資格」でも、49種類のIT資格の中で2位を獲得した。
記者が受験を思い立った理由はいくつかあるが、自身が記者として自覚していた「弱み」を克服したかったのが最も大きな理由だ。経営者やCIO(最高情報責任者)に取材する際、経営戦略の話になるとうまく話を引き出せない場面が多かった。もともと情報システム部門から転職した記者は、取材や執筆における経験の不足をIT現場で得た経験で補うことがままある。ゆえに経験値の乏しい戦略部分の話題については、うまく扱えなかった。
もちろんベテラン記者の中には、一人称で経験していないテーマでもうまく取材し記事にできる人がたくさんいる。そして、おそらくはそうしたスキルを伸ばすのが、記者としての「王道」だ。だがITの現場経験の方が長い記者にとっては、試験勉強を通して知識を体系化し、戦略を立てる側の立場でアウトプットしてみるという方法が弱みの克服に適していると考えた。