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 新型コロナウイルスの影響で一時開催を見合わせていた世界最大級の産業技術の国際展示会「HANNOVER MESSE 2022」(2022年5月30日~6月2日、ドイツ・ハノーバー)が3年ぶりにリアル開催された。現地で取材した筆者が驚いたのは、過去に何度も現地参加した人々が異口同音に「例年と違う」と唱えていた点だ。同展示会は今年で75周年を迎えた。長い歴史の中で起きた異変とは何だったのか――。

HANNOVER MESSEの外観
HANNOVER MESSEの外観
(写真:ドイツメッセ)
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 最も大きな異変は展示会の規模だ。初めて現地参加した筆者は展示会場の端から端まで歩くだけで10分はかかる規模の大きさに圧倒された。一方で、コロナ禍以前のHANNOVER MESSEを知る人からすると物足りなかったようだ。それもそのはず。今回の出展社数は2019年の約6500社に対し、6割減の約2500社だった。

 出展社の少なさは会場のマップからも見て取れる。東京ビッグサイトや幕張メッセよりはるかに広いHANNOVER MESSEの敷地には大きなホールが30棟近くある。例年はこれらの建物をフル活用していた。しかし、今年展示会場として使用したのは10ホールにとどまった。建物の中も「例年と比べてブースの密度が低く、大手企業などが出す2階建てのブースもほとんど見られなかった」(コロナ禍前のHANNOVER MESSEを知る来場者)とややにぎわいに欠けたようだ。

HANNOVER MESSE 2022の会場マップ
HANNOVER MESSE 2022の会場マップ
マップ上で色が付いているホール2~6、8、9、11~13が主な展示会場だった。例年はホール14~27も使用している。(画像:ドイツメッセ)
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 出展社が激減した主な要因は中国政府が新型コロナウイルスへの警戒を解かなかったからだ。例年1000社以上出展していたという中国企業の大半はドイツに渡航できず、100社以下の出展にとどまった。

 ホール11の一角にあった「チャイニーズパビリオン」ではパネルなどの設置は完了していたものの、来場者の姿は見えず、閑散としていた。3人いた中国系の説明員はドイツ在住だといい、「他の説明員はみんな中国から来られなかった」と残念そうに語っていた。

チャイニーズパビリオンのブース
チャイニーズパビリオンのブース
展示パネルは設置してあるものの、人影はほとんどなかった。(写真:日経クロステック)
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 2022年2月末から続いているロシアによるウクライナ侵攻も、展示会の出展社数減と無関係ではない。例年ロシア系企業は、数は多くないものの出展していた。ところが今年は「ロシアは参加禁止だった」(展示会主催団体関係者)という。

 HANNOVER MESSEの開会式でスピーチしたドイツのOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)首相は数分間に渡り、ロシアを厳しく批判した。その上で出展社など産業界に対して「戦争終結に向けたロシアへの制裁措置に協力してくれている」と感謝の意を述べた。

ドイツのOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)首相
ドイツのOlaf Scholz(オラフ・ショルツ)首相
(写真:ドイツメッセ)
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 来場者数も2019年の21万5000万人に対し、今年は7万5000人と3分の1近くまで減少した。オンラインで1万5000人参加したことを加味しても、例年の半分以下だ。ただ、来場者の減少は必ずしも展示会の質の低下に直結しない。

 JETROデュッセルドルフ事務所で次長を務める木場亮氏は「一般的に、来場しにくい環境下でも参加する出展社と来場者は本気度が高い」と指摘する。「物見遊山の参加者が少なく、本格的なビジネスの交渉が増えるのではないか」と期待した。報道関係者向けの閉会式では主催団体らが「3分の2以上の出展社は来年の参加を決めており、これは2019年より高い比率だ」と展示会の充実ぶりをアピールする一幕もあった。