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問題の先送りではないのか

 両行の大規模トラブルは、今後の勘定系システム論議に大きな影響を与えそうだ。勘定系システムのアプリケーション部分に極力手を加えず、オープン化やクラウド移行などシステム基盤の更改にとどめる銀行が増える可能性がある。

 事実、両行の大規模トラブルに前後する形で、こうした方針を打ち出す銀行も出始めている。横浜銀行や北陸銀行、北海道銀行、七十七銀行、東日本銀行の5行は2024年1月にも、共同利用システム「MEJAR」について、富士通製メインフレームからLinuxベースのオープン基盤に移行する。ただし、アプリケーション部分はNTTデータの勘定系パッケージ「BeSTA」を温存する。

 三井住友銀行は2025年度までに勘定系システムを刷新するが、既存のプログラム資産にほぼ手をつけず、システム基盤の更改とアーキテクチャーの見直しを主体にする。移行コストとリスクを限定するためだ。投資額は約500億円で、みずほ銀行がMINORIの開発に投じた金額の9分の1程度の水準だ。

 勘定系システムを手掛けるNTTデータや日本IBMといった主要ベンダーもこうした方針を後押しする。全面刷新を避ける潮流に対して、筆者には1つの疑問が浮かぶ。アプリケーション部分に手をつけず、システム基盤の更改に限定するのは、問題の先送りではないかという点だ。勘定系システムを塩漬けにし、中身を知る人材がいなくなれば、新サービスの開発に時間を要し、システム障害の影響も拡大しかねない。

 一方、勘定系システムの全面刷新は莫大なコストや大規模障害のリスクを抱える割に、メリットが見えづらいという側面もある。コストやリスクを抑えながら、いかに時代の変化に対応しやすい仕組みを手に入れるか。現実解はシステム基盤の更改と並行し、商品・サービスや事務プロセスの整理を進めることだろう。こうした地道な取り組みが将来の選択肢を広げることになる。