全2370文字

 共通ポイント業界に「本命」がいよいよ参入する。スマートフォン決済で首位のPayPayだ。NTTドコモや楽天グループなどのライバル勢は、PayPayがスマホ決済と同様に、豊富な資金力を元手に共通ポイント業界に殴り込みをかける構図を警戒する。PayPay参入で共通ポイント業界の勢力図はどう変わるのか。

 「うちの加盟店に営業攻勢をかけている」。ある共通ポイント事業者の幹部は、PayPayに対する警戒感を日々強めている。

 PayPayは今春、共通ポイント業界への参入計画を明らかにした。2022年10月以降、「PayPayポイント」をグループ外に開放する予定だ。同社によると、PayPayポイントの発行額は2020年度時点で既に業界2番手の水準で、2023年度に業界首位を狙うという。現時点で、PayPayは共通ポイント参入に関する詳細な戦略を明らかにしておらず、それが一層、ライバル勢の疑心暗鬼を強めている。

共通ポイント業界は大手5社体制に

 今、共通ポイント業界は、ドコモの「dポイント」、三菱商事やKDDIなどが出資するロイヤリティマーケティングの「Ponta」、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の「Tポイント」、楽天グループの「楽天ポイント」の4社体制だ。2010年代前半まで老舗のTポイントとPontaが業界をけん引していたところ、2014年に楽天(現・楽天グループ)、2015年にドコモが相次ぎ参入し、今の構図が固まった。PayPayの参入に伴い、グループ外にも開放している共通ポイント事業者は、これら大手5社がしのぎを削る形になる。

主な共通ポイントの概要
楽天ポイントの会員数は楽天ID数
dポイントPontaTポイント楽天ポイント
運営会社NTTドコモロイヤリティマーケティングTポイント・ジャパン楽天グループ
会員数8908万人1億816万人7013万人1億以上
加盟企業・ブランドの例日本マクドナルド、ファミリーマート、ローソン、ライフコーポレーション、マツモトキヨシ、メルカリローソン、KDDI、リクルート、日本航空、出光興産吉野家、ファミリーマート、マルエツ、ウエルシアグループ、ENEOS日本マクドナルド、吉野家、ファミリーマート、東急ストア、出光興産

 なぜPayPayはドコモ参入から7年近くがたったこのタイミングで、共通ポイントに乗り出すことを決めたのか。PayPayは2018年にスマホ決済を始めた当初は、共通ポイント参入に必ずしも前向きではなかった。PayPayに出資するソフトバンク幹部は2019年秋の時点で「共通ポイント参入に意味があるかどうかだ。ある程度は(ポイントをグループ内に)抱え込んだ方がいいという考え方もある」と語っていた。

 転機はポイントを巡るヤフーとCCCの蜜月関係の終焉(しゅうえん)だ。ヤフーが2022年3月末で「Yahoo!ショッピング」などでのTポイントの付与・利用を終了し、4月からPayPayポイントに全面的に切り替えたのだ。

 Tポイントからの離脱に歩調を合わせる形で、ヤフーを傘下に抱えるZホールディングス(HD)とソフトバンクは3月末、Tポイント運営会社であるTポイント・ジャパン(TPJ)の保有株式をCCC側に全て売却し、TPJに派遣していた取締役も退任させた。

関連記事: ソフトバンクとZHDがTポイント運営会社の株式売却へ、CCCは瀬戸際に

 ヤフーとCCCは2012年に戦略的資本・業務提携で基本合意し、翌2013年にポイントをTポイントに統合していた。CCC幹部は今回のヤフーとの関係見直しについて「ソフトバンクとヤフーは独立した企業体なので、彼らには彼らの戦略がある」と話すにとどめている。

戦略的資本・業務提携を発表するCCCの増田宗昭社長(左)とヤフーの宮坂学CEO(当時)
戦略的資本・業務提携を発表するCCCの増田宗昭社長(左)とヤフーの宮坂学CEO(当時)
[画像のクリックで拡大表示]

 PayPayの共通ポイント参入に当たっては、同社がスマホ決済で一定の存在感を得たことも大きい。累計登録者数は2022年7月13日時点で4900万人を超えている。2021年度の決済取扱高は2020年度比で約1.7倍の5兆4000億円、決済回数も同1.8倍程度の36億回以上まで膨らんだ。インフキュリオンの「決済動向2022年4月調査」によると、QRコード決済アプリの利用率でPayPayは「楽天ペイ」や「d払い」などを抑えて首位に立つ。