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「お金目的ではない。給与もスーパープログラマーを雇うような金額ではない」

 いったいどういう経緯で登氏はNTT東日本に入社したのか。NTT東日本特殊局の山口肇征氏は、「1年ほど前に、日本の光通信速度が遅くなっている記事が新聞で話題になった。それを見ていた登氏が自分の研究をNTTに見てほしいと、ある人を介して紹介された。その際、NTTが持つNGN(次世代ネットワーク)や局舎を活用することでこんなことができると話が盛り上がり、だったら登氏がNTT東日本に入社すればいいじゃないかとなった」と語る。

 NTT東日本が登氏のような天才プログラマーを迎えるには、相当な給与も必要と思われる。だがNTT東日本によると「登氏の入社はお金目的ではなく、給与もスーパープログラマーを雇うような金額ではない」という。

 登氏は20年4月にNTT東日本へと入社した。しかし新型コロナウイルスの感染拡大の影響で打ち合わせがことごとく中止になり、その時間を使って作ったのが今回のシン・テレワークシステムだ。

 登氏は今後、NTT東日本のNGNを使って、いろいろ面白いことをやりたいと話す。登氏がネットワークに興味を持ったのは、大学の研究室でコンピューターネットワークを自由に触れて、楽しみながら仕組みを勉強できたからだという。「Linuxでは商用パッケージであるRed Hatに対して、より先進的な技術を搭載するFedoraがある。同じように、NGNも商用網とより先進的な技術を取り入れた実験網があるべきだ。今のNGNは触ってはいけない部分ばかり。実際に触れられる実験網があれば、どんどん新しい取り組みができる」(登氏)と続ける。

 かつては旧態依然とした大企業のイメージがあったNTT東日本だが最近は、農業やeスポーツ、クラウド、畜産・酪農分野の新会社を立て続けに設立するなど、新ビジネスに果敢にチャレンジしている。18年6月に社長に就任した井上福造氏が、こうした新ビジネスに積極的な理由もあるだろう。今回の登氏の入社も、井上社長が後押ししたという。それはNTT東日本の危機意識の表れかもしれない。かつて収入の大半を占めていた固定電話が、需要減によって毎年400億円もの減収となる構造だからだ。

 だがNTT東日本は、東日本エリアに約3000の通信ビル、地球16.5周分の張り巡らされた加入者光ケーブルなど、巨大なアセットを持つ。登氏のような人物にとってこのような巨大なアセットは、他に代えがたい最高の遊び場に映っているのではないか。だからこそお金目的ではなくNTT東日本に入社したと考えられる。

 そんな登氏とNTT東日本の組み合わせによって、これまでにない新たなサービスが続々生まれそうと考えるのは筆者だけではないだろう。