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 経済協力開発機構(OECD)は2015年にアマゾンの巨大物流センターなどはPEに当たると勧告し、日本も2018年度の税制改正で対応した。しかし、「デジタル経済と税」(日本経済新聞出版社刊)の著者で国際課税に詳しい森信茂樹・中央大学大学院特任教授は「日本が課税するには日米租税条約を改定する必要がある」と話す。国内法よりも条約の効力が上回るからだ。

 二重非課税についてはOECDや20カ国・地域の金融世界経済に関する首脳会合(G20)、欧州連合(EU)が、企業の競争条件が公平ではないとして対策を検討してきた。「デジタル課税」と呼ばれる税制だ。

 これまでに米国や英国、新興国がそれぞれサービスの利用者がいる国も一定の税収を得られる新しいデジタル課税の仕組みを提案している。こうした提案を基に、国際課税の原則の見直しや低税率国への利益移転に対抗する措置の導入を議論することが決まっている。

国際課税原則の見直しの具体的提案
国際課税原則の見直しの具体的提案
(出所:財務省)
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 日本が初めて議長国となって2019年6月28~29日に開催したG20首脳会議(大阪サミット)は首脳宣言で、OECDが2019年5月末に国際課税の原則の見直しなどについて「2020年末まで最終報告書を策定する」とした作業工程を承認した。

 一方で、フランスや英国などの欧州各国は独自のデジタル課税の導入に動き出している。フランスは2019年7月11日に上院でデジタル課税法を可決・成立した。世界やフランス国内で一定規模の売り上げがあるIT企業に同国内でのターゲティング広告やマーケットプレイスの売上高に対して3%を課税するという。いわばGAFAなどを狙い撃ちにしたものだ。

 これに対して米国は「米通商法301条」に基づく調査に乗り出したと伝えられている。米大統領が米国企業にとって不公正な慣行であると判断すれば関税を含む制裁措置を発動できるという。欧州各国はOECDの国際的な議論で合意ができた場合には独自課税を取り下げると表明しているが、2020年末までにまとまらなければ世界的な混乱も予想される。

 日本企業にとっても他人事ではない。欧州各国に対抗して米国が提案しているデジタル課税の仕組みは「IoT(インターネット・オブ・シングズ)にも課税する仕組みであるため、日本企業も巻き込まれて影響が大きい」と森信教授は警鐘を鳴らす。

 例えば、日本の自動車や家電のメーカーが製造した自動運転や人工知能(AI)などの機能を搭載した製品を海外に輸出してデータを取得して活用すると、製品やサービスの利用者がいる輸出先の国が課税できるようになる。森信教授は「日本としても独自に課税の考え方を検討しておくべきだ」と主張する。

 政府がクラウドサービスを利用しようとするのは行政サービスのデジタル化を迅速に進める必要に迫られているからだ。同時に、経済のデジタル化に対応した新しい税制などの制度設計も急務だ。デジタル化はあらゆる面で急激な環境変化をもたらしている。いずれも後れを取ってはならない。