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 個人に合わせて効果的な健康改善プランをAI(人工知能)が提案する――。同じ症状や疾患でも、要因などによってアプローチを変える「個別化した重症化予防」の研究開発が活発だ。ここ数年で診断支援AIや治療用アプリなど、治療分野にデジタル技術が使われ少しずつ実用域に入っている。予防分野でもAIやIoT(インターネット・オブ・シングズ)などを活用した研究が加速しているのだ。

個別化した重症化予防のアドバイスを自宅で受けるイメージ
個別化した重症化予防のアドバイスを自宅で受けるイメージ
(出所:123RF)
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 この分野では高血圧を対象とした取り組みが先行する。高血圧はそのまま放置すると脳卒中や心疾患など命に関わる疾患の発症につながるため、重症化予防が欠かせない。オムロン ヘルスケアは2021年6月1日、京都大学に「健康医療AI講座」を設置し高血圧に関連した共同研究を始めた。個別化した血圧管理の提案と、高血圧が原因で生じる脳卒中などの早期発見を目的とした2種類のAIを開発する。

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 筆者は共同研究に関する会見に参加した。特に面白いと感じたのは開発が成功した後のAIの生かし方だ。オムロン ヘルスケアは米国と英国などで実施中の遠隔医療サービスに、これらのAIを実装する予定としている。

 米国で展開する遠隔医療のシステムは、自宅で測定された血圧などのデータを医療機関の電子カルテに自動で転送するものだ。異常値が計測された場合はアラートが出て、医師や医療従事者が把握できる。医師は計測されたデータを確認しながら、ビデオ通話などを利用して患者を診察する。

 高血圧が原因で生じる脳卒中などは突然発症する。そのため、月に一度といった定期的な通院時に発見するのは難しい。現在は異常値のアラートにとどまるが、システムにAIが加われば個人に合わせた改善プランを提示したり、予兆を早期に発見できたりするため、支援の内容が広がる。タイムリーな診察や治療につなげ、個別化した重症化予防を促進できるというわけだ。