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 自動運転レベル4の実用化に向けて、期待されているのが低価格で長距離検知が可能なレーザースキャナー(LIDAR)だ。量産車としては、レベル3への対応を視野に入れていたドイツAudi(アウディ)のセダン「A8」が初めて搭載。トヨタ自動車も2020年7月7日に高度運転支援技術「Lexus Teammate」を搭載すると発表した「レクサス」ブランドの新型セダン「LS」にLIDARを4つ搭載する(図1)。レベル3の自動運転車の実用化を公表しているドイツDaimler(ダイムラー)や同BMW、ホンダもLIDARの搭載を予定する。

図1 LIDARを4つ搭載する「レクサス」ブランドの新型セダン「LS」
図1 LIDARを4つ搭載する「レクサス」ブランドの新型セダン「LS」
(出所:トヨタ自動車)
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 このようにLIDARの搭載が進みつつあるのは、LIDARには、(1)波長の短い赤外レーザー光を用いることから距離分解能(前後左右)が高い、(2)測距精度の距離依存性が低い、(3)測定距離が長い、(4)レーザー光を走査することで3次元空間を捉えられる、といった長所があるためだ。現在、車載用の外界センサーとして使われているカメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーの中には、高い距離分解能と長い測定距離を両立できるものはない。しかも、距離情報を3次元空間で取得するため、情報処理量はカメラほど多くない上、夜間の検知にも強い。

 自動運転ではレベルが上がるほど、外界センサーに求められる性能や信頼性は高くなる。しかも、クルマの周囲360度を冗長性を持たせながら検知するには、搭載するセンサーの数も増えていく。東芝研究開発センター上席研究員の崔明秀氏によれば、「レベル4以上の自動運転では、複数のLIDARが必須であり、LIDARの小型・低コスト化が不可欠」という。例えば、車両の前方に遠距離LIDAR、後方に中距離LIDAR、左右側方の前後に1つずつ合計4つの近距離LIDARを搭載することなどが想定されている。

 そして近年、LIDARの小型・低コスト化のために進められているのが、レーザー光をポリゴンミラーを使って走査する従来の機械式とは違い、MEMS(微小電子機械システム)のミラーを使って走査するソリッドステート式への移行だ。駆動部にモーターを使った回転機構が不要なため、小型・低コスト化しやすい。実際、A8やレクサスLSでもソリッドステート式のLIDARを搭載している。

 ただ、崔氏によれば、高い分解能を維持しながら機械式と同等の200mの長距離測定が可能なソリッドステート式のものはまだ実現されていない。ソリッドステート式で使う受光デバイスのSiPM(Silicon Photo Multiplier)と距離情報として読み出す回路の小型化が難しかったからだ。これまでのソリッドステート式の測定距離は、機械式の1/4程度だった。