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 有給の長期インターンシップを実施、1000万円レベルの年収を提示――。AI(人工知能)人材不足が深刻化する中、企業間の獲得競争は過熱する一方だ。高い報酬や快適な職場環境を用意し、AIの素養を持つ学生を引きつけようと躍起になっている。

 こうした動きをよそに、あるユニークな方法で人材を獲得している会社がある。ITコンサルティングやシステム開発などを手掛けるトリプルアイズだ。画像認識や囲碁AIなど、AI関連のソフトウエア開発にも取り組む。

トリプルアイズはグロービスなどと共同で囲碁AI「GLOBIS-AQZ」の開発を手掛ける。2019年7月には、最年少プロ入りで話題となった仲邑菫初段と対局、勝利した
トリプルアイズはグロービスなどと共同で囲碁AI「GLOBIS-AQZ」の開発を手掛ける。2019年7月には、最年少プロ入りで話題となった仲邑菫初段と対局、勝利した
(出所:トリプルアイズ)
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 同社が実施しているのが、「将棋採用」。将棋に長けた人材を集めるためのもので、実質的な入社試験は将棋の対局のみ。将棋の有段者である同社社員に勝てば、基本的に内定が出る。

 同社の福原智代表取締役は「将棋が強い人はITエンジニアに向いている」と話す。過去の採用経験から、それを確信しているという。

トリプルアイズの福原智代表取締役(左)と、経営管理本部 財務経理部の服部隆広氏。服部氏は「将棋採用」での対局相手を務める
トリプルアイズの福原智代表取締役(左)と、経営管理本部 財務経理部の服部隆広氏。服部氏は「将棋採用」での対局相手を務める
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将棋道場で出会った学生を採用

 福原氏が例に挙げたのが、2011年ごろに採用した1人の学生だ。自ら将棋を趣味とする福原氏が、将棋道場で出会った。

 その学生は将棋の腕前は見事だったが、リーマン・ショック後の採用が冷え込んでいた時期で就職に困っていた。「就職先がないと言うので、じゃあうちにくるか?と声をかけた」(福原氏)。当人は文系出身でコンピューターのスキルはなかったが、トリプルアイズに入社してプログラミングを学び始めた。

 1カ月ほどは悪戦苦闘が続いたが粘り強く取り組み、ぐんぐんスキルを伸ばしていった。中でも、ロジカルに物事を考える能力の高さが際立っていた。「将棋は、盤面の状況をロジカルに考えながら駒を置いていく。将棋が強い人は、処理の流れを矛盾なく組み立てていくプログラミングに向いている」(福原氏)。

 その能力は、顧客とのやり取りの中でも発揮された。福原氏が連れて行った顧客先で、システムの要件をヒアリングしていたときのこと。顧客が想定できていない状況があることをすぐに察知し「この場合はどうしますか?」と先回りして質問したという。要件定義の抜け漏れをなくす上で重要だ。