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 「適質適価」――。これは「適正な品質の製品が適正な価格で売買されている」状況を示す『日経ものづくり』による造語だ。安易に造語を使わないのが編集のセオリーだが、今回はあえて特集の全編にフィーチャーした。というのも、特集の土台となるアンケート調査の結果から、「適質適価が損なわれている」という造語を含めたフレーズが現場の実情を伝えるのにふさわしいと考えたからだ。

顧客の要求品質が過剰だと感じたことはあるか
顧客の要求品質が過剰だと感じたことはあるか
日経ものづくりが2021年4月に実施した品質に関するアンケート調査の結果。「顧客の要求品質が過剰だと感じる」とする回答は8割弱に上った。(出所:日経ものづくり)
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 日経ものづくりでは、2021年4月に品質に関するアンケート調査を実施した。その自由記述欄に書かれた回答者の声をまとめると、おおむね次のようになる。


 そもそも発注者である顧客が市場のニーズを的確に把握していない。市場が何を、どこまで求めているか分かっていない。だから付加価値にならない機能をどんどん加えたり、市場が求める以上の品質の設計にしたり、根拠のない見当違いの要求をする。そのため過剰品質になる。

 高い品質の実現にはコストがかかる。しかし、新興国の安価な製品との価格競争に巻き込まれている顧客は値上げを認めない。しかも、品質を担保するための品質検査の検査項目をどんどん増やす。変化の早い市場に合わせて短納期を求める。手間やコストが増える負担は、サプライヤーなど下請けの企業に負わさせてしまう。

 一方で、製造現場は人手不足や設備の老朽化という課題を解決できないままでいる。リソース不足であるにもかかわらず負担は増えるばかりだ。追い込まれた現場は、過剰品質が抱える「顧客の要求に多少、合致しなくても製品の安全・安心に問題は生じない」という逃げ場を確保して、やむなく品質不正に走る。


 「発注者である顧客の無知から生じる過剰品質の要求が、品質不正の元凶の1つだ」。現場はこう訴える。アンケート調査の回答者に対する、電子メールなどによるその後のリモート取材でも、次々と品質不正の背景にある「付加価値を生まない無用な要求」に対する不満と怒りの声が次々と寄せられた。

アンケート調査の回答者プロフィール
アンケート調査の回答者プロフィール
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