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 自動車メーカーからモビリティーカンパニーへ進化中のトヨタ自動車。それを実現するために複数の活動を行っている。その1つが、健常者だけでなく障がい者も自由に移動できる社会を実現すること。キャッチコピーは「Mobility For All(すべての人に移動の自由を)」である。例えば、足に障がいがあり、車椅子を日常的に使っている人が運転できるクルマを提供する。そのクルマでは、ブレーキやアクセルのペダルを踏む代わりに、それらの操作が手で行える(以下、手操作自動車)。中欧の小国「スロベニア共和国」において、手操作自動車を提供することによって、障がい者の活動を支援している、スロベニアToyota Adriaに話を聞いた。なお、この取材は2020年3月1日にスロベニアで行った。

 スロベニアは旧ユーゴスラビア連邦共和国を構成していた国で、構成国の中では地理的に最も西側に位置する。EUに加盟しており、旧ユーゴスラビアの構成国の中では、唯一、通貨はユーロで、シェンゲン協定にも加盟している。人口は約210万人で、日本で人口16位の長野県と同じくらい。面積は約2万km2であり、小国である。今回、話を聞いたToyota Adriaはスロベニアの首都であるリュブリャナに本社を置く、豊田通商の現地法人。スロベニアに加えて旧ユーゴスラビアの構成国5カ国において、トヨタのクルマの販売や各種サービスを手掛ける。

 人口が少ないためだろう、スロベニアの公共交通機関はあまり発達していない。いくつかの都市間を結ぶ国鉄はあるものの、首都のリュブリャナ市内には地下鉄やトラムといった鉄道はなく、バスが主な公共交通機関である。このため、自家用車を使う人が多く、自動車事故は少なくないという。事故によって、車椅子生活を余儀なくされたり、クルマのペダル操作が不可能になったりする人が、でてきてしまう。

スロベニアで開催された、障がい者のモビリティーに関するイベントの様子
スロベニアで開催された、障がい者のモビリティーに関するイベントの様子
Toyota Adriaのスライド
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 Toyota Adriaの社長を務める土谷謙介氏によれば、スロベニアでは約5100人が車椅子生活を送っており、半数以上の2800人が手操作自動車向けの運転免許証を持っているという。ただし、2800人のうち、実際にクルマを運転しているのは約1/3にすぎない。手操作自動車の教習所がないことがその一因だという。