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 自宅でのテレワーク作業が板についてきた。通勤がない分、早くから仕事を開始できる。集中できるので効率がいい。最初はこわごわ使っていたビデオ会議ツールの「Zoom」や「Teams」にも慣れた。数カ月で自分の働き方に訪れた変化を考えると驚く。

 こうなると「捻出できた時間を使ってもっと働ける」と思う人が増えてもおかしくない。しかも本業とは別の仕事で、だ。つまり複業である。本記事では、複数の仕事を同時並行でこなすという意味で「複業」という表現を使う。

一部企業は複業人材を求め始めたが…

 一部の企業は複業人材を積極的に求め始めた。ヤフーは2020年7月15日、複業人材の募集を発表した。ヤフーでの業務以外を本業とする約100人を戦略アドバイザーや事業プランアドバイザーとして受け入れる。またユニリーバ・ジャパンは同17日、複業やインターンシップの募集を開始。ライオンは6月、他企業で働く社員などを対象に、複業できる人を公募した。

 複業が大きくクローズアップされたのは2018年。政府が働き方改革をうたい「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表したのだ。それから2年、個人と企業の双方に、より一層複業の機運が高まっているように思う。だが、少し目をこらすと、個人と企業では複業に対する温度差がある。

 企業の複業促進を図ることを目的に、ある実証実験が行われようとしている。人材サービスを手掛けるパーソルホールディングスのグループ会社、パーソルプロセス&テクノロジーが進める「複業促進モデル実証プロジェクト」だ。

 同プロジェクトでは、複業促進支援サービスを開発すべく、複業制度を持つ企業や持っていても十分に活用できていない企業にサービスを実際に利用してもらい効果実証を行う。

 担当するパーソルプロセス&テクノロジーの成瀬岳人ワークスイッチ事業部事業開発統括部プロダクト開発MA推進部長は、今回のプロジェクトに向けて100社程度にインタビューを行った。その結果、企業側は、社員の働き過ぎなどの労務リスクと競合などへの情報漏洩リスク、さらに転職リスクに大きな懸念を持っていると分かった。

 成瀬氏は「企業側が認めない限り、社員はだまって複業することになり、会社にとって『シャドー複業リスク』が高まる」と話す。実際、パーソルプロセス&テクノロジーの企業ベンチャーであるワークスイッチコンサルティングが400人の複業実践者に行った調査では、所属企業に「申請していない」と答えた割合は55.3%に上る。「複業を肯定的に捉え、自社社員に進んで促すような先進的な企業は、取材した100社のうちで10%に満たない。今後3~5年で先進企業が10%くらいまでになるといいと考える」(成瀬氏)。

 プロジェクトを通して、実施企業の社員が適切に複業を開始するためのコンテンツや仕事情報へのアクセスを得たり、自らのキャリア資産を独自分析し、客観的に複業でどうキャリア開発すればよいかの方向性を見いだしたりできるようにする計画だ。対象企業は5社(社名は現時点で未公表)で、実証実験は2020年10月の開始を予定する。年度内に新サービスのリリースを目指す。

スキルの腕試しを求めるワーカー

 プロジェクトには複業促進や支援に関わる知見を持つ8団体がパートナーとして共同参加し、サービスの設計やコンテンツ協力といった役割を担う。

 Another works(アナザーワークス)はパートナーの1社だ。同社は複業可能な人材のデータベースを保有し、採用を検討する企業が気になる人材に直接アプローチできる複業マッチングプラットフォームを運営する。フリーランス人材と企業に所属する複業人材合わせて約1万人がデータベースに登録している。割合はほぼ半々だ。契約企業は月額のデータベース利用料を支払う。顧客は大手企業からベンチャーまで120社程度だという。

 個人の複業に対する意欲は、高まっている。同社の大林尚朝代表取締役CEOは「今までもヤフーやサイバーエージェント、ディー・エヌ・エーなど大手IT企業に働きつつ複業を実践する社員は存在していた。だがこの新型コロナ禍で、製造大手など今まで見なかった業種の人材によるデータベース登録が増えている。複業に興味を持つ潜在層であったが一歩踏み出せなかった人たちだ」と話す。