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 厚生労働省が2018年7月31日に発表した「一般職業紹介状況」によれば、6月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント増の1.62倍だった。実に44年ぶり、第2次ベビーブームのころ以来の高水準という。情報処理・通信技術者はどうかというと前月比0.1ポイント増の2.4倍。2017年12月に記録した2.68倍(全体は1.92倍)と比べると2018年に入ってやや落ち着いてきているが、それでも全国のハローワークでは仕事を探す情報処理・通信技術者1人に対して、企業が2.4件のオファーを出している計算だ。売り手市場である。

 ただ、IT業界はこれまでもずっと売り手市場だった。バブル期、2000年問題、ネットバブル期。そして今はセキュリティやAIの人材が足りない。記者も「人材不足」と何度書いたことか。一般職業紹介状況で毎年12月の情報処理・通信技術者(2011年までは情報処理技術者)の有効求人倍率を過去14年分調べると、倍率が「1.0」を切って買い手市場になったのは2009年12月(有効求人倍率は0.45倍)と2010年12月(同0.82倍)の2回のみ。2008年9月に起こったリーマン・ショックの余波が残る時期だ。全体の有効求人倍率が2013年12月にようやく1.03倍まで回復したのを見れば、IT人材がいかに社会から期待されているかが分かる。

有効求人倍率の推移(2004年12月~2017年12月)
有効求人倍率の推移(2004年12月~2017年12月)
(出所:厚生労働省の『一般職業紹介状況』を基に本誌作成)
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 3Kだ7Kだと言われていたのは2010年前後だったと記憶している。大量の派遣プログラマーを動員して大規模開発を始めた挙げ句、あるいはネットサービス隆盛期に大量の受注が舞い込んだ挙げ句、デスマーチに陥るケースが珍しくなかったことで「ブラック業界」とのレッテルが貼られたりもした。大学で情報系を学んでもIT業界に半数も進まないという記事も書いた覚えがある。

 こういった悪評が立ったにもかかわらず、日本のIT人材は増えている。情報処理推進機構(IPA)が毎年発行する『IT人材白書』によれば2017年度推計のIT人材数は前年度比2万7000人増、率にして2.3%増の119万6000人だった。10年前の2007年度推計が102万9460人なので、この10年で16万6000人増えた。業界の歴史からみて、定年退職で業界を去る人がまだそれほど多くないと考えると、新卒入社を中心にした純増が続いているといえるかもしれない。

IT人材の総数推計の推移(2007年度~2017年度)
IT人材の総数推計の推移(2007年度~2017年度)
(出所:情報処理推進機構『IT人材白書』を基に本誌作成)
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 IPAの白書は定点観測という点で評価できる半面、ユーザー企業とIT企業という伝統的な区分のままであり、いわゆるネット業界で働く人材数が見えてこない。リクルートキャリアの調べによると、「SE」より、「インターネット専門職(Webエンジニア含む)」の転職求人倍率は2~3ポイント高い。上記の厚労省の有効求人倍率と同じく、ピークだったのは2017年12月でSEが3.41倍、インターネット専門職(Webエンジニア含む)に至っては6.45倍という高水準だった。直近の2018年6月のデータではSEは3.09倍、インターネット専門職(Webエンジニア含む)は4.93倍だった。IPAには調査の価値を高めるためにも、ぜひネット業界の人数調査に踏み出してほしい。

転職求人倍率の推移(2015年11月~2018年6月)
転職求人倍率の推移(2015年11月~2018年6月)
(出所:リクルートキャリアの資料を基に本誌作成)
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 さて、売り手市場が続くIT業界でもどんどん人を集めているベンチャー企業がある。どんな殺し文句やどんな人材獲得戦略があるのか。実際に2社に聞いてみることにした。