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 近年、度重なる豪雨により水害や土砂災害が頻発している。文部科学省が2021年6月8日に発表した公立学校の水害・土砂災害対策の実施状況の調査によれば、浸水想定区域にある全国7476校のうち、6374校は建物内への浸水対策を実施していなかった。

 生徒の命を守るために学校の水害対策は重要だ。さらに、学校は地域の避難所に指定されるものもある。地域防災のためにも、一刻も早く取り組むべき課題だろう。

佐賀県嬉野市立塩田中学校の外観。高床構造でつくっている。設計者はSUEP.・InterMedia JV(写真:嬉野市教育委員会)
佐賀県嬉野市立塩田中学校の外観。高床構造でつくっている。設計者はSUEP.・InterMedia JV(写真:嬉野市教育委員会)
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 先進的な水害対策を実施した公立学校の1つに、佐賀県嬉野市立塩田中学校がある。浸水想定区域に立地している学校だ。14年8月に完成した校舎は高床構造で、地盤面から1階床面までの高さが2.6mある。校舎の2階と高台側の道路を接続し、水害時には学校から高台側に出ることができるようにした。一方で、中庭や校庭の高さを周囲から低くし、貯水機能を持たせた。

 旧校舎の耐震性不足による建て替えに当たり、水害対策を検討した。当時、浸水想定区域外への移転による再建も検討したものの、小学校区との位置関係や地域住民の意向などを踏まえ、現地で再建することになった。地盤のかさ上げなどを実施すると周辺の住宅地への流水が増す恐れがあったため、高床構造とし、避難経路を確保することにした。

1990年夏の大水害で被災した、建て替え前の佐賀県嬉野市立塩田中学校付近の様子。右奥に見える赤い屋根や茶色の建物が体育館や校舎だ。大水害の際に同校周辺は1m程度浸水した。旧校舎はこの際、床上浸水の被害を受けた(写真:嬉野市教育委員会)
1990年夏の大水害で被災した、建て替え前の佐賀県嬉野市立塩田中学校付近の様子。右奥に見える赤い屋根や茶色の建物が体育館や校舎だ。大水害の際に同校周辺は1m程度浸水した。旧校舎はこの際、床上浸水の被害を受けた(写真:嬉野市教育委員会)
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 塩田中学校は建て替えで対策に取り組んだ事例だが、簡易な方法で浸水対策を実施した事例もある。その1つが相模原市立相陽中学校だ。同校は19年10月の台風19号(東日本台風)の際、避難所として体育館を使っていた。しかし大雨により、体育館の出入り口前でひざ下程度の浸水が発生。建物内への浸水を防ぐため、土のうの設置により対応した。

 この教訓を踏まえ、相模原市教育委員会は20年、相陽中学校の体育館に脱着式のステンレス製止水板を新たに設置した。相模原市教育委員会学校施設課の担当者は「学校運営の妨げにならないよう、脱着式とした。施工者と協議を重ねてつくった」と語る。