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 業務上分からないことがあったら隣の席の人に聞けばいい――。これまで気軽にできていたことがテレワークでできなくなった。聞きたいのは、ちょっとしたこと。社内システムを使う際の方法や設定など、マニュアルを見れば解決するようなことが多い。もちろん電話やチャット、メールなどで質問はできる。だが隣の人に聞く気軽さは捨てがたい。

 「自分で調べろ」。その通りである。だがいざ調べようにも、業務マニュアルは紙ベースでオフィスにファイリングされている、あるいはデータになってはいるものの更新されていない、そもそもどこに保存されているか分からない、検索しても見つからない……。テレワークでこんな状況に陥った人は多いのではないだろうか。さて何かいい手段はないものか。

紙のマニュアルのデータ化が発端

 テレワークにITの活用は不可欠だ。安定した通信回線や情報漏洩を防ぐセキュリティーもさることながら、様々なSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を利用することでテレワークは成り立つ。チャットやWeb会議、勤怠管理、会計、タスク管理など目的に合ったSaaSを駆使すれば、自社にIT部門を持たない中小・零細企業でもリモートから業務をこなせる環境が整う。今後テレワークの広がりとともに、こうしたSaaSの一角に定番として加わりそうなのが手順書や業務マニュアルなどを作成し、共有・管理できるナレッジ共有サービスだ。

 福岡市の伊藤会計事務所はまさに「隣の人に聞けない」不便な状況をコロナ禍のテレワークで経験した。所員約20人と小所帯ながら、20ものSaaSを活用して業務を進めている。同所で2020年7月、利用率が2位にまで浮上したSaaSがベンチャー企業のnocoが提供するナレッジ共有サービス「toaster team」だ。ちなみに1位はチャットワークのビジネスチャットサービス「Chatwork」だった。

福岡市の伊藤会計事務所が利用しているクラウドサービス
福岡市の伊藤会計事務所が利用しているクラウドサービス
出所:伊藤会計事務所
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 伊藤会計事務所は2020年4月、福岡県を含む7都府県に緊急事態宣言が出されたことからテレワークに移行した。同所の伊藤桜子代表は「3~4年前から業務の標準化、平準化といった業務改善を進め、クラウドサービスも利用していたため、スムーズにテレワークに移れた」と話す。だが「マニュアルが紙で残っていた」(同代表)