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 材料開発は、時間がかかるのが当たり前だった。18年前、『日経ものづくり』2004年12月号の特集「材料が『旬』今こそ使え」は、1990年代後半に花開いた日本ゼオンの高機能プラスチック「COP(シクロオレフィンポリマー)」*1の開発が1986年に始まっていたことを紹介し、「10年前、20年前に種をまいた機能材料が、幾多の試練を乗り越えて出番を待っている」と表現した。息の長い研究開発を進められるのが日本の材料技術の強みだ。

日本ゼオンのCOP(シクロオレフィンポリマー)。『日経ものづくり』2004年12月号に掲載した写真。(出所:日本ゼオン)
日本ゼオンのCOP(シクロオレフィンポリマー)。『日経ものづくり』2004年12月号に掲載した写真。(出所:日本ゼオン)
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 と、思っていた筆者に「いや、それはもはや幻想でしょう」と語ったのは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)材料・ナノテクノロジー部統括研究員の依田智氏。NEDOと産業技術総合研究所(AIST)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)、日本ゼオンのグループは繊維強化プラスチックに対してマテリアルズ・インフォマティックス(MI)技術を適用する実証プロジェクトを手掛け、その成果を2022年6月に発表した。この実証活動を含む「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」では材料開発の期間短縮目標を20分の1としている。

* NEDO・AIST・ADMAT・日本ゼオン「複数のAIを活用し、複雑な材料データからさまざまな機能を予測する技術を開発 ―配合条件の選定から成形加工・評価までの材料開発を大幅に加速―」

 10~20年の20分の1といえは半年~1年。そんなに短縮しなければならない理由の1つは、海外のMIの取り組みがそれくらい進んでいるためだ。長期間の研究開発を特に得意としない企業でも、材料開発の手段を得られる世の中になってしまっていた。

 MIはDX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要な1分野である。このMIについての特集記事を構成するため、ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者を対象に「MIに取り組んでみたいか」と聞いてみた。残念ながら回答数が十分に得られなかったため、あまり確定的には言えないが、回答は「取り組んでみたい」が「取り組みたくない」よりはるかに多かった。

「MIやデータ・ドリブンでの設計に取り組んでみたいか」との質問への回答結果。ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者に2022年7月29~8月3日に聞き、79人が回答。(出所:日経クロステック)
「MIやデータ・ドリブンでの設計に取り組んでみたいか」との質問への回答結果。ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者に2022年7月29~8月3日に聞き、79人が回答。(出所:日経クロステック)
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* COP 吸水性がほとんどなく、高い透明性を持つプラスチック。プラスチックは水を吸う性質があって、吸水率はポリアミド(ナイロン)66で2.5%程度、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)で0.3%程度なのに対して、COPは0.01%未満。吸水による寸法変化がないCOPはガラスに代わる軽量かつ高精度な光学部品材料としてさまざまな分野の機器に普及した。