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 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行で、多くの国は渡航者に対し出入国前後に、PCR検査結果や行動履歴の共有、行動制限などを求めている。こうした中、出入国のためにPCR検査結果などを共有する世界共通の電子証明書「Common Pass(コモンパス)」の開発が進んでいる。

 現状は検査証明書を紙でやり取りをしているが、これらを電子データとしてスマートフォンのアプリなどを使い各国共通で扱えるようにするのがコモンパスだ。

PCR検査結果をスマホアプリで共有

 コモンパスの仕様策定などを進めるのは、スイスに設立された国際的な非営利組織「The Commons Project(コモンズプロジェクト)」。米ロックフェラー財団が資金提供し、世界経済フォーラムや国際文化会館などが運営を担う。米Googleのエンジニアや米IDEOのデザイナーなどもメンバーとして参加する。

 2020年7月初めにコモンパスのフレームワーク設計と国際展開を開始後、すでに52カ国の政府関係者や国際機関などが賛同しているという。同プロジェクトは8月中にコモンパスの仕様を決め、10月には各国の政府機関などに仕様の提案を行う計画だ。

 新型コロナ対策としてスマホアプリを活用して自身の健康状態を示す取り組みには、中国の「ヘルスコード」がある。行動履歴や感染者との接触の有無、自己申告に基づく健康状態などのデータを管理する。メッセージアプリ「WeChat(ウィーチャット)」などと連携してスマホで表示する。

 ただ、個人の健康情報などプライバシーにかかわるデータの取り扱いを政府が一元管理する方式には、懸念の声もある。コモンズプロジェクト理事を務める国際文化会館の近藤正晃ジェームズ理事長は「検査結果などのデータを特定の政府や企業が独占するのではなく、公共財として信頼を持って扱うことがそもそもの問題意識だった」と言う。そこで、政府や企業ではなく、国際的な非営利組織であるコモンズプロジェクトがデータ基盤を含めたフレームワークをつくり、それを各国政府に活用してもらうという構想を掲げた。現在各国政府や関係機関と調整している。

電子データ管理で出入国がスムーズに

 コモンパスのフレームワークはこうだ。PCR検査の検査結果などを、個人のパスポート番号とともに、デジタルデータとして保存する。アプリが検査機関などの登記データベースと照合するとともに、これらを各国の出入国基準に照らし合わせて、基準を満たしているかどうかをアプリの画面に表示するようにする。入力する個人情報は、基本的には端末内で保存して、個人情報保護に配慮する。

 個人が利用することで、各国共通の電子的なデータ管理ができるため、出入国が安全でスムーズになるほか、自主隔離期間の短縮にもつなげられるかもしれない。個人の行動履歴をアプリで管理するかどうかは検討中としているが、感染者との接触履歴や行動履歴、健康状態を詳細に振り返ることができるようになれば、感染対策に寄与するため、渡航前後の自主隔離期間を短縮しても問題ないとみなされる可能性があるという。これは個人にとってはコモンパスを利用するインセンティブになるだろう。