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 2021年3月期に赤字を見通すマツダと黒字のSUBARU(スバル)――。よく比べられる2社のうち、近年はスバル優位の印象である。ただし、10年後を見据えると逆に思える。技術面でマツダに希望を感じる一方、スバルには閉塞感が漂う。

EVかと思いきやエンジン車(簡易ハイブリッド車)を用意していたMX-30。ロータリーエンジンがあれば……(撮影:日経クロステック)
EVかと思いきやエンジン車(簡易ハイブリッド車)を用意していたMX-30。ロータリーエンジンがあれば……(撮影:日経クロステック)
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 マツダは、今期営業利益で400億円の赤字に陥る見通しで、スバルは800億円の黒字だ。明暗を分けたのは、よって立つ市場の違いが大きい。マツダが重視する欧州市場は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で需要が大幅に減りそう。一方でスバルの強い米国と日本は、意外と持ちこたえている。

 近い将来を考えると、つらいのはマツダだろう。挑戦が裏目に出て、課題が山積みだ。大きいのが、「スカイアクティブX」エンジンと電気自動車(EV)である。難度の高い技術を詰め込んで勝負に出たXエンジンは、今のところ不発。「期待が大きかった分……」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の杉本浩一氏)とのため息が、あちらこちらで漏れている。さらにロータリーエンジンをEVやハイブリッド車(HEV)に活用する計画は、先延ばしされた。

 Xエンジンには「初もの」の技術を多く投入してあり、導入当初のコストが高いのは仕方ない。ただ肝心の燃費向上幅が小さいのが痛い。コストは時間をかければ下げる余地があると思うが、そもそも性能が達しなければ手の打ちようがない。技術者の一層の奮起で挽回を急がねば、欧州環境規制に伴う罰金がかさむばかり。「お荷物」になりかねない。

 EVについては、C/Dセグメントに位置する中大型車でまともなEVの計画が見えないのが苦しい。英調査会社IHS Markitの予測によると、20年から25年にかけて約10倍の400万台に達する急成長市場だ*1。しかもマツダの主戦場である欧州で約100万台、中国で約200万台と大半を占める。

*1 消費者の選択というよりは、環境規制による政府の後押しが主因の「官製市場」の側面が大きい。

 マツダはEVとして「MX-30」を欧州に投入するが、航続距離が200kmと短く、競争力はほぼない。500km超の「MX-50」と呼べる車両がほしいところだ。IHS Markitマネージャーの西本真敏氏は、「急成長市場にMX-30以外のEVを投入できれば、さらなる成長が期待できる」と指摘する。

 ロータリーを使った独自のEV戦略にこだわりたい気持ちは分かるが、資本提携するトヨタ自動車がスバルと共同開発するEVプラットフォームの採用を再考したほうがいい。

トヨタとスバルが共同開発するプラットフォームを採用したEV。写真はスバルのコンセプト(撮影:日経クロステック)
トヨタとスバルが共同開発するプラットフォームを採用したEV。写真はスバルのコンセプト(撮影:日経クロステック)
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 技術者の奮起とEV戦略の修正が要るマツダ。一方で、30年ごろを想定した長期目線で、世界の潮流とかみ合い始めた。