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PayPayにとってのメリットは?

 現状では、多くの人がPayPayを決済アプリと捉えているだろう。PayPayはキャッシュレス分野で地歩をさらに固めると同時に、生活に関わるあらゆるサービスをワンストップで提供する「スーパーアプリ」を目指すと公言している。

 One Tap BUYのPayPay化は、スーパーアプリの実現を加速する効果をもたらすと考えられる。PayPayは金融サービスを欠かせないピースと位置づけているからだ。「暮らしに密着したサービスの提供を目指す。暮らしに欠かせない機能の1つが金融」。PayPayの中山一郎社長執行役員CEO(最高経営責任者)は、こう強調する。スーパーアプリで先行する海外の事例を見ても、中国アント・フィナンシャル(Ant Financial)の「Alipay」が普及するきっかけの1つが、個人資産運用サービス「余額宝」だった。

PayPayの中山一郎社長執行役員CEO(最高経営責任者)
PayPayの中山一郎社長執行役員CEO(最高経営責任者)
(出所:日経FinTech)
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 ヤフーを傘下に抱えるZホールディングスは7月、One Tap BUYを含む関連金融事業会社6社の社名やサービス名をPayPayブランドで統一すると発表した。カードローンサービスをPayPayのミニアプリ「お金を借りる」として5月から提供しているジャパンネット銀行は「PayPay銀行」となる。

 PayPayブランドのもと、各社が提供する個々のサービスを強化してスーパーアプリに値する金融サービスの実現を目指すとみられる。One Tap BUYに出資するソフトバンクとみずほ証券は、少額からの長期・分散・積み立て投資を可能にする投資信託を軸とした新サービスをPayPay向けに提供していく方針を打ち出している。

One Tap BUYにとってのメリットは?

 One Tap BUYにとって、PayPayとの連携は起死回生の一打といえる。スマートフォン証券に先駆けて参入した同社は、いまだ利益を出す体制に至っていない。2020年3月期の当期純損益はマイナス31億1800万円。有識者の1人は「スマートフォン証券が扱う商品はシンプルで扱いやすいものが中心であり、収益力は高くない」と指摘する。

 2019年に創業者からトップの座を受け継いだ内山昌秋社長CEOは2021年3月期の黒字化を目指し、業績の立て直しを急ぐ。2020年6月時点で3000万人超の利用者を抱えるPayPayと手を結び、顧客接点を一気に増やす。これを主要な打ち手の1つとしている。

 「『貯蓄から投資へ』と以前から言われているが、なかなか進まない。関心を持たない人に『勉強しろ』と強いるのも難しい。できるだけ身近なサービスを実現し、それを投資へのエントリーポイントとしていく方策が望ましい。デジタルマネーを軸とする新たな経済圏の中で、証券機能を持つサービス提供者を目指す」。内山社長はこう明言する。

 同社は並行して、初心者からステップアップした利用者向けラインアップを強化。資金の5倍の金額で取引可能な日本株CFD(差金決済取引)などを追加した。エントリーポイントを広げる「面」に加えて、そこから入った顧客がステップアップして同社のサービスを利用し続けるようにする「線」の拡充を狙う。これがもう1つの打ち手だ。

 経営体制の強化も図る。6月には、ソフトバンクとみずほ証券の共同経営体制に9月末をめどに移行すると発表。ソフトバンクの子会社であると同時に、みずほ証券の持分法適用会社になる。One Tap BUYに対するみずほ証券の出資比率は3月時点で12.75%だが、これを20%以上50%未満に引き上げるとみられる。