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 2021年6月末、記者は東京都港区の川崎重工業東京本社を訪れていた。「Kawasaki(カワサキ)」ブランドのバイクをはじめ、鉄道、航空、船舶、そして巨大な産業用プラントに至るまで幅広く事業展開する同社が、小型モビリティーの領域に「一石を投じたい」と生み出した新たな車両に試乗するためである。

 東京本社ビル1階の製品展示スペースで記者を待ち構えていた車両は、中央部から後輪部にかけては見慣れた自転車のような風貌をしている。しかしながら、普通の自転車と決定的に異なる前輪部を持つ。2個の車輪が平行に並んでいるのだ。ペダルはあるが、このモデルの場合は基本的に後輪の駆動用モーターで走るため、3輪の小型電気自動車(EV)ということになる。

川崎重工業の「noslisu(ノスリス)」を斜め前から撮影
川崎重工業の「noslisu(ノスリス)」を斜め前から撮影
(撮影:日経クロステック)
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noslisuを斜め後ろから撮影
noslisuを斜め後ろから撮影
(撮影:日経クロステック)
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 車両の名称は「noslisu(ノスリス)」。21年5月、開発した川崎重工がクラウドファンディングのサイトを通じて発売したところ、15時間で計100台が完売。総額2950万円を集めたことで話題を呼んだ。

 バイクの既存顧客とは異なる世代への訴求を図るため、同社はフル電動モデル(税込み32万円)と電動アシストモデル(同27万円)の2種類を用意した。記者が試乗したのはフル電動モデルほうで、道路運送車両法上は第一種原動機付き自転車、道路交通法上は普通自動車に該当する。運転に普通自動車免許が必要な代わりにヘルメットの着用義務はない。車検も不要である。

 取得者数が多い普通自動車免許で運転できることや、前2輪で路面を捉えて安定して走れることが、従来のバイクでは考えられないほど「乗ってみようか」に対するハードルを下げている。これらがクラウドファンディングで高評価を得た理由といえるだろう。

 記者も実際に東京本社ビルの周辺を走ってみたが、運転に難しさは感じなかった。ハンドル部分の構成は原動機付きスクーターに近い。アクセルは右手親指のレバーで操作し、走行モードの変更やウインカーの点灯などは左親指のスイッチやレバーで操作する。ブレーキレバーを指で握って減速して止まる。最高速度は40km/h。航続距離は65km。自転車のようにペダルを漕(こ)いで走ることもできる。

ハンドル部分
ハンドル部分
(撮影:日経クロステック)
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 カーブを曲がるときは前2輪の軸をずらして車体を傾けるのが特徴だ。ただし、同じような方式で曲がる前2輪・後ろ1輪のバイクは、競合のヤマハ発動機やイタリアPiaggio(ピアッジオ)が既に量産販売している。

 記者も何回か運転経験があるが、他社の3輪バイクとは“乗り味”がかなり違う。川崎重工の3輪EVは質量が31kgと軽いためか、取り回しが良く、自転車の延長線上のような感覚で気軽に運転できる。さらに、重心が低く車両姿勢が安定しやすい。