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 太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーには、一般的な工業製品同様、大量生産すればするほど製造コスト、そして発電コストが下がるという特徴がある。太陽光発電は既に約45年間、風力発電も約30年間、その特徴を示し続け、今後も当分、それが続くとみられている。大量生産、大量導入を続けると、既存の他の発電源のコストを大幅に下回るようになり、電力やエネルギーの革命が起こる可能性が高い。

 この方向性にいち早く照準を合わせたのが、欧州連合(EU)だ。EUの政策執行機関である欧州委員会(EC)は2020年春に、2014年から続けていた2050年時点のEUのエネルギーモデルについての研究の最終報告を発表した。資料編も含めると202ページとかなりのボリュームである。そこでは、“再生可能エネルギー×水素社会”の実現を目指す方向性を明確にした。

 具体的には、これまで2016年のパリ協定を受けて2050年時点で温室効果ガスの排出を6割減らすというEU内の合意(Baseline)をさらに進めて、ほぼゼロエミッションを目指す方向性を打ち出した(図1の「P2X」や「1.5TECH」など)。その場合、2050年時点で約2500GW弱と、発電の設備容量の約8割5分を風力発電と太陽光発電、バイオマス発電などの再エネでまかなうことを想定する。化石燃料に基づく火力発電や原子力発電はそれぞれ数%の割合でしかない。これらも含めた年間発電量は約6000TWhになる見通しだという。

図1 再エネで電力出力の8割5分供給を目指す
図1 再エネで電力出力の8割5分供給を目指す
EUの2030年、2050年の電源別設備容量導入計画。2050年時点の計画で、現時点でEU内で合意できているのはBaselineと呼ばれる計約1600GWのプラン。ただし、これではCO2は6割しか減らず、パリ協定の条件を満たすことはできない。ゼロエミッションを目指すには「P2X(Power-to-X)」や「1.5TECH」が必要だとする。計画のうち、「EE」は効率重視モデル、「CIRC」は資源や材料のリサイクルを重視したモデル、「ELEC」はビルの暖房なども電化するモデル、「H2」は水素社会化を早めるモデル。P2Xは電力で合成したグリーン燃料の普及を急ぐモデル、1.5TECHは2100年の平均気温上昇幅を1.5℃以下にすることを目指したモデル。(図:ECのFinal Report “Study on energy storage – Contribution to the security of the electricity supply in Europe”,Mar. 2020より引用)
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 ただし、出力変動のコントロールが難しいこれらの再エネを大量導入するには、その出力を平準化するための大規模な蓄電システムの導入が必須になる。それには、揚水発電やEU内での電力融通のほか、Liイオン2次電池などの選択肢が幾つかある。ECの想定では、各蓄電システムの導入割合は時期ごとに変わる。2030年時点では、Liイオン2次電池も約100GWと一定の割合を占めるとするが、2050年時点では最大でも約50GWと減ってしまう。2050年の主流になる蓄電システムとしてECが想定するのが、グリーン水素だ。